伍拾参頁─潜入任務 5─ ページ15
「ありがとうございます。五十三でご契約です」
五十三という数字はかなり珍しいのか、それまでよりも大きな拍手が彼女を祝福した。
手を前で合わせて一礼し、次の者と交代するため後ろに下がる。
すれ違う瞬間、Aは耳元で小さく伝えた。
『中央右寄りの二番目。黄土色のネクタイ』
返事の代わりに微かに頷く。
普段と違い眼鏡をかけていない彼女はすぐさま該当の人物を見つける。
「続きまして、宝石のような翠色の目の少女です。此方も十五からの────ッ!?」
司会の男はその光景に目を見開いた。
先程まで横に居たはずの少女が、瞬きの間にとある人物目掛けて拳を振り抜いている。
彼は知っていた。
その人物がこの競売の主催者だということを。
目に飛び込んできたその事実に男は呼吸の仕方を忘れていた。
「はい、おしまい。後は適当に殺っちゃお〜!」
鈴奈が無邪気な笑顔を向けて腕を突き上げる。
殴られた男はうつ伏せ、床でピクピクと痙攣していた。
数秒遅れて状況を理解した者の悲鳴が響く。
そこからはドミノ倒しのようだった。
誰彼構わず押し退け出口へと向かう者。
隠し持っていたナイフに手を伸ばす者。
警衛に賄賂を渡す者。
大人に商品のことを考える余裕など一ミリも残っていなかった。
「お、お前達まさかッ!?」
「あはは、本当に短い間でしたがお世話になりました。いつかまた地獄でお逢いしま」
「動くな!!」
鋭く響き渡る男の一声。
混乱状態に陥っていた会場が一瞬にして鎮まった。
Aは目を細めてその腕を注視する。
男の腕には少女が捕まっており、その周りにも複数の少女が涙を浮かべて床に座り込んでいる。
しかし、彼女が注目した点は別にあった。
その男の腕はとても人間とは思えない鋭い鎌の形をしていたのだ。
「あらま、人質取られちゃったね。しかも異能力者」
『...ふむ。太宰、中也。彼は君達が相手してあげて』
Aは男を視界内に捉えたまま二人に指示を飛ばす。
既に隠す気のない彼等の表情は真剣に染まっていた。
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煉華(プロフ) - あきさん» あきさん、ありがとうございます!久しぶりすぎてどうかなと思ったのですが、アニメ放送開始したからか見てくださる人が多くて安心しました。頑張ります(^^*) (2023年1月27日 21時) (レス) id: 4710ee5a2a (このIDを非表示/違反報告)
あき - 続編おめでとうございます!ちょうど先週辺りから読み始めたのでタイミングが良かったです笑これからも頑張ってください。 (2023年1月26日 21時) (レス) id: 3fb64841ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:煉華 | 作成日時:2023年1月26日 20時