3射 ページ5
「A!湊!」
歩き出した二人を静弥が止めた。二人は同じような動作で振り返って静弥を見た。
「道場だけでも見ていかない?」
静弥は二人を見ているようで、強い視線をAにむけていた。
Aは静弥がなんとか湊を弓道に留めたいと思っていることを悟った。
案の定、湊は返事を渋っている。
「湊、見るだけなら良いんじゃない?弓も矢も持ってきてないんだし。道場見たら、スーパーで買い物して、アイス食べながら女子会しよ!」
Aは180度方向転換すると、静弥の方へと歩き出した。
「え、ちょっと、A!」
「ちょっと位良いじゃない!」
Aは腕を組んだまま湊を離さない。そんなAの一度言い出したら聞かない性格を湊は良く知っていた。
「分かったよ。見たら帰るからな!」
「さすが、湊!帰りにお一人様一個までの特売品を買うのを手伝ってあげよう!」
「それは、助かる。ありがとう。」
腕を組み、微笑みあいながら歩く二人を、周りで部活勧誘をしている生徒たちの目には恋人にしか見えていなかった。Aと同じクラスの少年の目にもそうみえていた。
「で、ふたりは付き合ってるの?」
先程からの疑問を投げ掛けたのは自己紹介をすませた山之内遼平だった。
「遼平、Aは俺の妹みたいな奴だ。」
「湊はわたしの弟見たいな人よ。」
Aと湊の声がぴったりと重なった。その瞬間、二人はムッとした顔を見合わせたが、静弥が間に入っていってお互いが見えなくなった。
「Aは俺の妹みたいな奴だし、湊も俺の弟のようなものだよ。」
ニッコリ笑う静弥にAも湊も言いたいことをグッと堪えた。
その様子を見て、遼平はこの三人のヒエラルキーの頂点は静弥なのだと確信した。
「トミー先生!私と湊はここで失礼します。特売品が私たちを待っていますので!」
「おぉ、二人は忙しかったんじゃった!二人とも、いつでも弓道部に来ていいからの。」
Aと湊は富岡に頭を下げると、道場の入り口で振り返り、道場へ頭を下げて外へと出ていった。
「あの二人、動きがピッタリだった…双子みたいに…」
遼平は二人が去った扉に向かってボソリと呟いたはずだったが、その言葉は静弥の耳に入っていた。
「Aの動きに湊が合わせているんだよ。Aは湊の憧れで、Aの様な射を目指してるから。もう、無意識にやってるんだよ。」
静弥も遼平の隣にならびに二人が消えていった扉をじっと見つめていた。
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ミラ(プロフ) - とても素敵な作品でした!続きが気になります!!無理せず作者さんのペースで頑張って下さいね(*^^*)楽しみにお待ちしてます♡ (2022年8月26日 3時) (レス) @page25 id: 7385d704d3 (このIDを非表示/違反報告)
蝶華 - 更新頑張ってください。応援しています。とても大好きで楽しく読ませてもらっています。 (2019年11月24日 2時) (レス) id: d1cd54c5d7 (このIDを非表示/違反報告)
桜花院 千桜(プロフ) - お大事にしてください!本当にMAXに辛い時はパソコンやスマホ等の画面が見れませんよね…早く治るように祈っています。 (2019年1月21日 9時) (レス) id: a0e7a7bf7a (このIDを非表示/違反報告)
狐花 - コメント失礼します。とても面白くてお気に入りの小説で、楽しく読ませてもらっています。これからのお話がどう進んでいくのかとても楽しみです。無理のないよう、更新頑張ってください!楽しみにしています。 (2018年12月17日 16時) (レス) id: f05b151338 (このIDを非表示/違反報告)
コサメユキ(プロフ) - 終夜さん» ご指摘ありがとうございます。一応、中盤からマサ湊要素が出てくる予定でしたが、出てくるまで外しておきます。 (2018年12月9日 13時) (レス) id: e3d25c6c83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:コサメユキ | 作成日時:2018年12月3日 22時