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なっちゃんは、どこにそんな才能を隠していたのか、素早い動きで棚の陰から観葉植物の陰へと移動した。
ハイヒールを履いているのに、なぜか足音一つ立てない。
特殊な訓練でもしてるんじゃないか……こういう時のために。
なっちゃんは喫煙コーナーの方へ目をやり、ごくりと生唾を飲んだ。
目は喫煙コーナーへ釘付けにしたまま、片手で小さく私を手招きをする。
私もくノ一のような動きを見習って、サササッと棚から観葉植物の陰へ移動する。
そして葉陰から二人の方を見ると……うっ、ばっちりじゃんっっ。
パイプ椅子に座った薮課長はワイシャツ姿で、下は脱ぎ捨てていた。
隣の椅子には薮の履いていたはずのダークグレーのスラックスが掛けられている。
その脚の間にはシャツを脱いだ八乙女主任が膝立ちになって、薮課長の下腹あたりに顔をうずめて、一心に頭を動かしていた。
八乙女の後ろ頭には薮の手が回っていて、ほんのりと明るい髪の毛が薮の神経質そうな指に絡まっている。
「そうそう、ひかる、奥まで咥えろよ……」
にやにやしながら、薮が言う。
昼間の、私に見せていた誠実ぶった「薮課長」の面影はない。
おいおい、ヤバい、これ、まじのやつ。
腐女子歴〇年の私も、さすがにホンモノを拝めるとは思っていなかった。
しかも、自分の職場で。
隣のなっちゃんは何故か涙ぐんでいる。
「どした?」
小声で尋ねると、彼女は「もう、尊すぎて、泣けちゃう」と鼻をすすった。
「こんないいもの見せてもらって……明日から、私、全力で仕事しますっ」
「――アンタ、仕事はいつも全力でやるもんだよ?」
ひそひそと会話しながらも、腐女子の視線は二人から離れない。
八乙女の背中は白く滑らかで、浮き出た肩甲骨がきれいなフォルムを見せている。
湿った水音がいやらしく響く。
「ぁんっ、あんっ……やぁぶ……きもちい?」
「しゃべんな。続けろって」
薮は八乙女のご奉仕に満足したのか、眉をしかめてカラダを震わせ、その瞬間には八乙女の後頭部を強く自分の下腹に押し付けていた。
私もなっちゃんも、もはや余計なことは何も言わず、ただ、ただ、ふたりの行為を見つめている。
アダムとイブの時代から人間を悪行に陥れる好奇心ってやつで、覗きに来ただけだった。
なのに、こんなもんを目の当たりにできるとは。
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冬の勿忘草(プロフ) - 読み返したくなるお話し。何度でも食べられる^^*うまうま 始まった頃が懐かしいです…☆ (2019年5月25日 22時) (レス) id: d769e67f4c (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - あいさん» あい様、気づけば月末です。いやー、みんな頑張った…やりきりました…。作品を大好きと言っていただけてホントに嬉しいです★温かくこれからも見守ってくださいませ。ありがとうございます。 (2018年5月30日 21時) (レス) id: 0d848a077f (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - しろくまさんの作品が好きすぎて 、やぶひかも好きすぎて、ベストコンビ大賞も1位を取りたくて、同じようなコメントばかりしてごめんなさい!しろくまさんの作品はどれも大好きです!これからもよろしくお願いします。 (2018年5月29日 23時) (レス) id: 47fe4b83c6 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - あいさん» わーんごめんなさい。下はあい様へのレスです〜。 (2018年5月29日 20時) (レス) id: f22c03c885 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - あい様、こちらにもありがとうございます。残り日数が少なくなって、焦り気味でございます。オマケのお話しはやぶひか担みんな大好きナポリタン★一度は書きたかったネタです(笑)reject 本編もまた必ず書きます!よろしくお願いいたします。 (2018年5月29日 20時) (レス) id: f22c03c885 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しろくま | 作成日時:2018年2月22日 16時