reject 【ybhk】

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「ナポリタンねぇ、うまいですよねぇ」

薮課長はそういって、そういえば、と大真面目に何やらグルメ雑誌を取り出します。

「ここの店、ベスト・ナポリタン大賞2018にエントリーしていますよ。
総務課長、投票しますか」

きちっとしたビジネスバッグに、そんなものを入れていたとは……。

私は驚愕の目線で薮課長を見ました。

すると、八乙女主任も驚いた顔をして薮課長がグルメ雑誌をながめている様子を見ています。


ふっ、と八乙女主任の大きな瞳が私を捉えて、「ねっ、やぶっておもしろいよね？」とぺろりと唇を舐めました。

ちろっと覗いた赤い舌先の色っぽさにドキドキしながら、私は同意の意味こめて大きく頷きました。



そんな私と八乙女主任を無視して、薮主任と総務課長は、別々の席にもかかわらず会話を続けます。

「ああ、ベスト・ナポリタン大賞2018でしょ？
当然、私は投票したわよ、もちろん」

「ふーん、さすが総務課長。仕事が早い」

「当り前よ。このベスト・ナポリタン大賞で一位になると、トップページで扱われるのよ。
この店のファンとしては投票しなきゃね」



その後、ふたりの課長は私と八乙女主任には分からない、奥深いナポリタンの世界について余談を繰り広げていました。



結局、薮課長と総務課長は、似ている。

それが、私と八乙女主任の出した結論でした。




---おしまい

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