7 ページ29
.
……結論から言うと、人事課長は退職前提の長期療養に入った。
以前から、人事課長は気に入った若い社員のゴシップをかぎつけては、それをチラつかせて手籠めにしていたのだ。
その被害者の一人、システム課の新入社員、山田涼介くんを助けるべく、高木主任はひとりで人事課長に談判しにいき、逆に脅されたらしい。
山田が、直属の上司の高木雄也と寝ていることを暴露する、と。
総務課長の私と営業二課課長の薮が、うまいこと上層部にそのことを伝え、人事課長に処分が下ったわけだ。
当事者が訴え出るとややこしいが、なんの関係もない私たちからの通報だと処分は迅速だった。
ゴタゴタが収まったあと、なぜか私となっちゃんは高木主任主催の「慰労会」に呼び出された。
システム課の山田涼介、営業二課の薮課長と八乙女主任、葉草副主任、人事課の知念、それに総務課の私。
「まぁね、ホントだからしかたねぇんだけどさぁ」
会社の近くの居酒屋で、高木主任は日本酒の盃をあおった。
「俺はともかく、涼介はまだ新入社員だろ。こんなんで辞めたら、後々の人生にかかわるし」
「自分らが助かれば仲間をアイツに売ってもいいと思っていたわけか?
まじで、こっちこそいい迷惑だぞ」
ぶつぶつ言いながら薮課長が手酌で酒を注ごうとすると、向かいに座った山田くんが慌ててお銚子を取り、「どうぞ」と、慣れない手つきでお酌をした。
薮はにやにやしながら「おっ、気が利くねぇ」とお酌を受け、今度はお銚子を取り上げて、山田の盃に注いでやる。
山田は神妙に両手の指先で盃を持って、ソロソロといった感じで白い盃に唇をつけている。
「……かっわいいねぇ……」
薮のいやらしい笑いに、八乙女はあからさまにムッとして、唐揚げにグサリと箸を突き刺した。
高木は薮に向かって、「別に薮と八乙女を売ったわけじゃねぇし」とうそぶく。
「涼介の代わりに八乙女はどうですかって、アイツにおススメしただけだ」
「勝手に勧めんな!!」
薮と八乙女の声が揃い、あまりのタイミングの良さに、ぷっ、となっちゃんが噴き出した。
高木が山田を守るために、代わりに、と八乙女を挙げたのは……まあ、八乙女が可愛いっていうのもあるけど、人事課長を追い出すために実力者の薮を巻き込みたかったんだろう。
高木の計算は確かに合っていた。
「僕、ここにいる意味がわかんないんだけど」
ふんっ、と知念が鼻を鳴らす。
367人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
冬の勿忘草(プロフ) - 読み返したくなるお話し。何度でも食べられる^^*うまうま 始まった頃が懐かしいです…☆ (2019年5月25日 22時) (レス) id: d769e67f4c (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - あいさん» あい様、気づけば月末です。いやー、みんな頑張った…やりきりました…。作品を大好きと言っていただけてホントに嬉しいです★温かくこれからも見守ってくださいませ。ありがとうございます。 (2018年5月30日 21時) (レス) id: 0d848a077f (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - しろくまさんの作品が好きすぎて 、やぶひかも好きすぎて、ベストコンビ大賞も1位を取りたくて、同じようなコメントばかりしてごめんなさい!しろくまさんの作品はどれも大好きです!これからもよろしくお願いします。 (2018年5月29日 23時) (レス) id: 47fe4b83c6 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - あいさん» わーんごめんなさい。下はあい様へのレスです〜。 (2018年5月29日 20時) (レス) id: f22c03c885 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - あい様、こちらにもありがとうございます。残り日数が少なくなって、焦り気味でございます。オマケのお話しはやぶひか担みんな大好きナポリタン★一度は書きたかったネタです(笑)reject 本編もまた必ず書きます!よろしくお願いいたします。 (2018年5月29日 20時) (レス) id: f22c03c885 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しろくま | 作成日時:2018年2月22日 16時