27---やぶ ページ27
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ひかるを二度とあそこに立たせないと決めていたはずなのに、結局また俺はひかるを夜の街に出すしかなかった。
「やぶ?……疲れたの?」
ひかるに申し訳なくて、まともに顔も見れない。
そんな俺を心配して、ひかるは優しく頭をなでてくれた。
日暮れと同時に自動販売機の陰にふたりで立つ。
数人の男がひかるをしげしげと見て行き、中には声をかけてくるやつもいたけど、ひかるは首を振って断る。
「見たらすぐわかると思うんだけどな……」
ひかるはわざと卵色のマフラーと手袋をしている。
客からもらった物を身に着けるひかるを見るのは嫌だったけれど、今日は目立たなきゃなんないから、仕方ない。
しばらくすると、Kがひょっこり現れ、これ差し入れ、と温かい缶コーヒーとコーンスープを差し出してくれた。
「俺も探してみるからぁ……見つけたら連絡するねっ、がんばろ」
それだけ言って、Kは手を振って街中へ消える。
「K、やさしいね……。
初めの時、なんか薮とKが一緒にいるのを見たら、俺……ヤキモチ焼いちゃって……。悪かったよね」
コーンスープをこくりと飲みながら、ひかるは俺の心拍数を一気に上げるようなセリフを口にする。
そっか、そっか、ヤキモチ焼いてくれてたんだ。
にやけそうになる頬を無理に引き締め、俺は缶コーヒーを飲み干す。
そのままごみ箱に投げ込もうとした時だった。
「――ヒカル君?久しぶりだね」
そう声をかけてきた男がいた。
とっさにひかるの方を見ると、スープの缶をぎゅっと握って、うなずいている。
――こいつだ。
俺は大きく息を吸ってから、できるだけ丁重に「すみません」と話しかけた。
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しろくま(プロフ) - 有さん» 有様、蔵之介様も素敵ですね!出来れば蔵之介様にはちぃ様を手込めにして欲しい←病気。情報屋のお話しはまた必ず書きますので、よろしくお願いいたします!懲りずに短編を連載中なので、そちらも。宣伝(笑)コメントありがとうございました! (2018年1月9日 7時) (レス) id: f22c03c885 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - ありこさん» ありこ様、おはようございます。前作、めっちゃ長かったのに、ファンなんて…嬉しくて倒れそうです。ありがとうございます。少し時間をおいて、またこの二人でお話を書きますので、ぜひまた遊びにきてくださいね!きゅんきゅんしていただけるように頑張ります。 (2018年1月9日 7時) (レス) id: f22c03c885 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - まっつんさん» まっつん様、おはようございます!楽しんでいただけて嬉しいです★今回はどーてーを光君に捧げる薮様がメインテーマと言う妄想話です(笑)どうぞこれからもよろしくお願いいたします。コメントありがとうございました! (2018年1月9日 7時) (レス) id: f22c03c885 (このIDを非表示/違反報告)
有(プロフ) - あぁぁぁあー長瀬くん!!なるほど!私の脳内では勝手に佐々木蔵之介さんに変換されてました。笑 とっても面白くて、毎日楽しみにしてました!ありがとうございました!!わがままですが、情報屋の続きをもっと読みたいです(●´ω`●) (2018年1月9日 1時) (レス) id: 074c0f6b92 (このIDを非表示/違反報告)
ありこ(プロフ) - はじめまして、前作からしろくまさんのファンです。2人の出会いからラストまで始終可愛いくてきゅんきゅんしました。とても面白かったです。素晴らしいお話をありがとうございました! (2018年1月8日 23時) (レス) id: 0a1f704509 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しろくま | 作成日時:2017年12月26日 1時