過去も、未来も 【ybhk】-情報屋series2

17---やぶ ページ17

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――抱きたい。


突然湧いた衝動が、いとも簡単に、ごまかしようのないカラダの変化につながる。


あ、ヤバイ、まずい。

こんなん、ひかるにバレたくない。



「俺、シャワー行ってくるっ」

唐突に立ちあがり、俺はあたふたと上着を脱ぎ、シャツを脱ぐ。


ポカンとしていたひかるは、俺の慌てっぷりに何か思い当たった風で、くすっ、と笑った。



ひかるは優しいから、その「何か」を口にはしないだろう。

……言葉にされたら、俺のちっちゃなプライドはズタボロだ。


「温まってきてね。あとで俺も行くから」


ひかるはそれだけしか言わなかった。





シャワーの水圧を最大にして、頭からざあざあと熱いお湯を浴びる。


強い水音に紛れて、俺は立ったまま……一回自分で抜いた。




そうでもしないと、頭が少しも回らなかった。



――落ち着け、俺。

人生の転機とかいうやつは、何気ない顔をしてやってくるもんだ。

16年しか生きていない俺でも、それくらいのことは知っている。

ひかるに出会った時も、その場はなんてことない日常の一コマに過ぎなかった。



ひょっとしたら、今夜がその人生の転機かもしれねぇな……。



もともと考えるより先に手が出るタイプの俺は、十分に自分をコントロールしないと、ヘマをしでかす可能性が、かぎりなく高い。

例えば、考えなしにひかるを押し倒してしまう、とか。

しかも……俺、そういうこと、したことないくせに。

完っっ全に経験不足。


見た目が大人っぽいからか、俺はそっちも経験豊富と見られがちだ。

だけど、妙に潔癖なところのある俺は、どうしても金で買ったり、行きずりで寝たりするのが嫌だった。

――俺の母親は路上に立つ女だった――

愛し、愛せる相手とでなければ、やらない。

そう思っている。



だから、俺はひかるを抱きたい。




でも、ひかるに嫌われたくなければ、自分がかなりのヘッポコだということを、もう一度よーく頭に叩き込んでおかないといけないだろう。

経験不足のやつがオトコを抱くのは、相手に負担をかけることくらい分かっている。

自分の衝動のままにひかるをどうこうしてしまったら――あんな話を聞いた後なのに――ひかるが俺に抱いている信頼は地に落ちるに違いない。




わしゃわしゃといつもより強くシャンプーして、アタマの外側だけでなく、中身も洗えたらいいのに、なんてくだらないことを考えた。

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