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あれは去年の春、桜のころだった。
桜が舞い散る季節は人の心が緩んで魔が忍び込みやすい、と父は口癖のように言っていた。

花鎮めの祭りは陰陽師にとって大事な仕事だ。
疫病をもたらす魔は、桜の花びらが舞う陰にいて、人々を虜にするものだ。

田舎の陰陽師だったけれど、腕のいい陰陽師だった父は、あちこちの村から請われて、おれを連れて花鎮めの祭りに出かけていた。



その中のひとつの村に行った時だった。

村境に入った時から、父は見たことのないほどの緊張に包まれ、おれもピリピリした嫌な雰囲気を感じ取った。

なんてことのない、都の外れにある小さな村。

それが…妙に胸をざわつかせた。


村の長老が出迎えてくれ、村の人たちも父とおれを丁重にもてなしてくれた。

こじんまりした村だけど、十分に生活は恵まれているようで、道端でおれたちを物珍しそうに眺める小さな子供たちも若い娘らも、小奇麗な着物を着ていた。

村の人たちと挨拶をかわしたあと、あらかじめ依頼してあった祭りに必要な(にえ)を確かめて、父とおれは長老たちとともに村はずれにある森の中の桜の木の下に行った。

樹齢は1000年だと言う見事な桜の大樹の花は、散り始めたばかり。
ひらりひらりと可憐に舞う花弁に包まれて、注連縄が飾られた白木の祠が祀られている。

見た目は何も問題なさそうな祠だったのに、おれは祠のそばへ近寄ることができなかった。
恐怖で足がすくみ、祠の結界……ままごとのように小さく石積みで区切られた結界に足を踏み入れる事すらできない。

すぐそこに魔がいる……そう感じた。


「涼介、これはまずい」

父は花鎮めの祭りの用意をしながら、震えるおれに声を潜めて囁いた。
村人に悟られないよう平然と振る舞っていたが、父の横顔には張りつめた緊張が確かにあった。

「この祠には魔が憑りついてしまっている。
もともとこの祠に祀られている神は魔に抑えられ──息絶える寸前だ。お前もわかるだろう?」

おれは慌てて小さく頷いた。
冷や汗が背中を流れ、手の震えがどうしても収まらない。

父とともにこうして祭りの場や、魔を払うための祭事に幾度も出ていたおれだったが、こんなに不吉で強い魔を感じることは初めてだった。


「下手に贄を捧げると、魔を勢い付かせてしまう。
かといって祭りをせねば、神ご自身の息が途切れてしまうだろう」

それに、と父はチラリと背後の村人たちを見やった。
賑やかに祭りの準備をしている善良な人々だ。

…→←…



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しろくま(プロフ) - みるみるみるきーさん» どうにかゆうやも土地神様も収まりがついたようです。これからやっとひかる君が出て来ます。ybhkなのに遅い!(笑)ちまちま更新していきますので、引き続きお付き合いください(*´∀`) (3月27日 23時) (レス) id: 690493538b (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - 伊野尾さまーー!お戻りになれたのねー。よかったーー!さすがですわ、薮さま。チビゆうやも行先が決まってひと安心。続き楽しみにしておりますでございます! (3月22日 12時) (レス) id: a47283bf22 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - みるみるみるきーさん» みるさま、お褒めいただきありがとうございます!チビゆうや、我ながら気に入っております(笑)まだ、続きますのでよろしくお願いいたします(^^)d (3月22日 8時) (レス) id: 690493538b (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - うわーーんんん!土地神さまー!!どーなるのー!!ゆうやも出てきたし。どーなるのー!!!いやはや、ほんとに情景がすごーーく、すごーーく、思い浮かぶの!!大好きだー、こーゆーの!! (3月18日 22時) (レス) id: a47283bf22 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - はなこさん» うわぁ、はなこ様、いらっしゃいませ〜。お褒め頂いて舞い上がっています(*ノωノ)涼介君にはもちろんテンション高めの帝を配置しておりますので、ご安心ください(笑) (2月20日 20時) (レス) id: 8dcb6e2f50 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しろくま | 作者ホームページ:___  
作成日時:2020年1月13日 22時

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