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「女かぁ。そういや……薮様には馴染みの女はいないのかよ。
まだここに来てから、一度も女の屋敷に行ったことないけど？」
声を潜めて尋ねるが、ゆうりは「そんなの、本人に訊けば？」と鼻も引っかけない。
退庁して屋敷に戻ったあとの薮様は、ひとり酒を飲んでいるか、書物を読んでいるかのどちらかだ。
忍んでいく女もいなければ、盃を共に交わす友もいないようだ。
貴族様は毎晩宴会尽くしで、そうでなければ夜な夜な女の所に忍んでいくもんだと思っていたが、薮様は違っている。
いつも、ひとり。
だけど寂しい感じは全くなくて、いつもふにゃふにゃしていて、ゆうりやおれを相手に軽口を叩いては自分で笑っている。
──変な人だ。
こんな人が超一流の陰陽師なんて信じられない。
後ろを振り返ると、薮様は長い手足を持て余すようにしてブラブラと歩いていた。
初めて薮様のお屋敷に来た日に『気を抜くな』って言った割には、油断だらけ、隙だらけにしか見えない。
やがて、おれたちは登庁するお役人たちの牛車でごったがえす立派な朱雀門を潜り、陰陽寮の前にたどり着いた。
この頃には日が昇り始めて、辺りは明るくなってきているが、入り口の篝火はまだ焚かれている。
一晩中、高価な松の薪を焚き続けるなんて、やはりここは別世界だと実感した。
「じゃあな、二人ともいい子にしてろよ〜」
薮様は片手を上げて行きかけてから足を止め、「涼介。やっぱりお前は残れ」と振り返る。
「今日は帝にご挨拶する予定だ。帝に紹介してやるよ」
何のことか分からず、ボンヤリ立ち尽くしていると、ゆうりが強く背中を叩いた。
「馬鹿、涼介、早く行きなよ！」
「早くしないと置いて行くぞ〜」
歩き出した薮様の声に我に返り、おれは急いでその後を追った。
いくつもの廊下を曲がり、悠々とした足取りで薮様は建物の奥へと進んでいく。
その後ろを小走りでついていく。
ここは役所の集まる大内裏の中、帝がいる内裏まではそう遠くない。
そんな高貴な身分の方々ばかりの場所に、おれみたいなガキがいていいものだろうか。
滑らかな床板が吸い付くように足裏に感じられる。
汚れた足で、こんなに綺麗な床を踏んでいいのかと、怖ろしい。
杉戸を開けて、こじんまりとした一室に通される。
片隅には筆や硯が雑然と乗った文机があった。
「ここは俺の執務室なんだ、誰も来ないとは思うが……ここで大人しく待ってろ」
おどおどするおれに釘を刺して、薮様は行ってしまった。
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しろくま(プロフ) - Ｑさん» いや〜改めてあけましておめでとうございます。まだ松の内だからいいよね？今回、ハピエンにはならなくて残念です(／。＼)次こそは…！！懲りずに書くのでゆるゆる見て頂けると幸いです。 (2021年1月5日 23時) (
レス) id: 690493538b (このIDを非表示/違反報告)
Ｑ(プロフ) - 完結（ちゃんと年内に仕上げて！）おめでとうございます。そうか、そういうことだったのね、お二人の存在が透明感に包まれてたのは…黄泉のふたり、美しい…究極のハッピーエンドよ！しろくまさまワールド、堪能させていただきました！素晴らしき〜 (2021年1月2日 1時) (レス) id: 693b52752a (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - みるみるみるきーさん» みる様、本当になんか…色々すみません〜。最後までお付き合い頂いてありがとうございました。次はちゃんと計画立てて書きます← 2021年もよろしくお願いいたします。良いお年を〜＼(^o^)／ (2020年12月31日 11時) (レス) id: 690493538b (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - 完結おめでとうございます。まさか、まさか薮様の方が先に？？まさかまさかです！伏線がたくさんあったんですねぇ。でも、あの世でもふたりは幸せだろうから、涼介の父上も戻ってきたんだから、ハピエンなんですよ！！ (2020年12月31日 9時) (レス) id: a47283bf22 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - みるみるみるきーさん» ハピエン目指して行きます！涼しくなって来たので、これから更新がんばります〜。どうかお見捨てなきようお願い致しますm(__)m (2020年10月15日 21時) (レス) id: 690493538b (このIDを非表示/違反報告)
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