弐佰弐拾玖頁─新タナ装イ 2─ ページ3
『それに伴い、私はあの時国木田さんと交わした約束を守らなければならないので厳しくさせていただきます。仕事、さぼらずに頑張りましょうね』
にっこりと微笑む笑顔の裏が怖い。
彼女の云う国木田との約束とは、彼と初めて会ったときに云った“太宰の悪戯や職務怠慢を止めさせる”というもの。
それまでの彼女は彼と同じく功績を残しつつもやりたい放題していた。
そんなAが宣言したのだ。
昼もまだだというのに太宰は疲れ切った顔で頭を抱える。
「Aが決めた最低限のことなら恙無くこなせるだろうけど、それを超えろって云われたら私明日には遣い物にならなくなっている自信しかないよ」
『大丈夫ですよ。だって昔はそうでしたから』
もう電流は嫌ですものね、と耳元で囁く。
何を思い出したのか太宰は背もたれに全体重を乗せて更にだらけた。
そんな二人のやり取りを敦は隣で首を竦めて横目で見ていた。
「判ったよ、私も約束したからね。取り敢えずその大量の荷物をなんとかしたら?というか、どう考えたらその量を自分の
太宰が目を向ける先には彼女が家から持ってきたパソコン周りに置くための文房具や卓上カレンダーなど。
どれもあると便利な物ではあるのだが、その量は明らかに机の容量を超えていた。
『引き出しが多いので問題無いと思ったのですが...まぁ入らなければ持って帰ります。それよりも私の服どうですか?似合ってます?』
そう云ってAはスカートの裾を摘む。
女性の服のセンスを否定してはならない。
頭の隅ではそう理解していても、太宰はからかいの言葉をかけずにはいられなかった。
「少し子供っぽいんじゃないの?まぁAに大人っぽい服装は似合わないものね」
『おうおう、中々云ってくれますね。事前にフルールにも同じことを云われたのでそこまで気になりませんが、太宰さんの云う通り身の程をわきまえているのですよ。子供が頑張って着飾っても逆に違和感を覚えるのと同じです』
「(...フルール君にも云われたんだ)」
パソコン作業に集中し、敦は悟られないように心の中で思う。
Aは落ち込むことなく更なる感想を求めに国木田の元へと駆けていった。
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作者名:煉華 | 作成日時:2023年1月26日 23時