弐佰肆拾参頁─両組織ノ困惑 8─ ページ17
「武装探偵社ってのは簡単に説明すると異能力集団だ。探偵を名乗っちゃいるがその主な人員はあの名探偵一人だろうな」
車窓に流れるヨコハマの景色。
中也の運転で目的地へと向かう間、私は外を眺めながらその組織の説明を受けていた。
『異能力集団ね。それでなんで私は其処に連れて行かれるの』
「手前の今の職場がその武装探偵社だからだよ。尤も、興味がある以外の理由がありそうだったけどな。太宰の野郎も其処の社員だ」
『え、私マフィア抜けて生きてるんだ』
どうやら裏があるみたいだけど未来の自分は上手いことやっているらしい。
マフィアを抜けたというのに森さんがあんなにも優しかったのがその証拠。
即撃ち殺されても文句は云えなかったのね、怖い怖い。
太宰は......判らないな。
気分転換でもしているのか、転職するほどの何かが未来で起こったのか。
考えても時間を無駄に使うだけだし、楽しくやっているのならそれでいい。
自 殺も止めていれば尚更。
「知りたいことがあるなら今のうちに聞いとけ。曖昧なモンは吐き出しとかねェとあっちで苦労するぞ。きっと太宰は面白がって直ぐには無効化させねェだろうからな」
『確かに。珍しく善いこと云いますね。それじゃあ中也の今の身長を』
「...手前、巫山戯るなら此処から投げ飛ばすぞ」
『わぁ怖い。冗談だから許して』
表面だけの軽い警告。
こうやって知人と話をして現在の関係性を知るのも面白いかもしれない。
でもまだ完全に頭が追いついていないのも事実。
『真面目に話すと、私はまだこの状況を受け入れきれてない。それが異能だからと云われてしまうとそれまでなんだけど、今の私の記憶に無いことを試してみようと思う。何もなければ必ず勝てる筈だから私が負けたら素直に受け入れられる』
丁度善いタイミングで信号が赤になり車が止まる。
予想外なことが起こるのは刺激的で楽しいけれどそれでも程度というものがある。
私は運転席に向けて右手を前に出した。
『中也、じゃんけんをしよう』
「じゃんけん?」
『私はグーかチョキを出す可能性が高い。勝敗は一手目で決める。私が勝ったら私の勝ち。君が勝ったら君の勝ち。あいこなら引き分けで終わり』
恐らく今現在に至るまでに何度かやったことがあるであろう
簡単で単純で、だからこそ現実を受け入れやすい。
彼はその握り拳を一瞥し、再度正面に戻って青信号を待った。
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作者名:煉華 | 作成日時:2023年1月26日 23時