「全てを捧げてくれた人+」09 ページ31
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足の爪を切りながら彼を待っていた。
ネイルでもしようかな、ペディキュアとか。
そうしたら彼は少しは私を抱く気になるだろうか?
女だと意識してくれるだろうか。
ガチャ、とドアが突然あいて驚いてそちらを見るとブイと彼が現れた。
びしょ濡れだ。
彼に抱かれたブイが私を見てクンクン鳴く。
「ど、どうしたの?」
「夕立ちみたい。雨すごくて」
窓を見ると確かに雨が降っていた。
全然気づかなかった。
「今タオル…」
そういえば、タオルの置き場も分からない。
あ、シャワールームのところかな?
そっと近づいてブイを受け取ろうとした。
その時、ぐいっと腕を引っ張られる。
バランスが崩れて私はそのまま彼の鎖骨あたりに顔をぶつけた。
「えっ、」
「…A」
「…テヒョン」
彼は私を確かめるように強く抱き締めた。
濡れたシャツがとても冷たいのに、彼の体はとても熱い。
あの頃よりも少しだけ厚くなった体。
筋肉がついたらしい。
「…怖くなる」
「?」
「Aがまたいなくなりそうで」
「いなくならないよ」
「これが夢なのかなって。俺の妄想なのかなって。怖くなるんだ。
散歩から帰ったら居なくて、Aなんて最初からいないんじゃないかって」
「私はここにいるよ」
「うん。だよね。俺変なんだよ」
「変じゃないよ」
「怖くてたまらない」
「うん…」
彼は震えていた。
そっと背中を撫でる。
ふぅ、と彼はゆっくり息を吐いた。
「もう私たちを邪魔する人なんていないよ」
「そうかな?」
「うん。もしいたとしたら逃げればいいよ」
「うん…」
「大丈夫。私たちずっとそうしてきたでしょ?」
「うん…」
ポンポンと背中を優しくたたくとやっと彼は体から力を抜いた。
私たちに挟まれて苦しそうだったブイがひょいっと飛び降りる。
「あ、ブイ。拭かなきゃ。そのままだとカーペット汚れちゃう…」
「俺のことも拭いて」
「うん。服脱いで」
「ん」
迷わず彼はシャツを脱いだ。
露わになる傷跡。
ズキンと胸が痛んだ。
シャワールームの戸棚からバスタオルを持って行くとまさかの彼は全裸だった。
「え、ちょっと!」
「ん?」
「ん?じゃないよ!隠してよ!」
「今更?」
「そ、そんな…」
彼は平然とこちらを向く。
私には彼が全く分からない。
なんでこんなことを平気でしてしまうんだろう。
私は慌てて彼にバスタオルを広げながら抱きついた。
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優桜(プロフ) - 更新してくださって本当にありがとうございます(T ^ T)そして完結おめでとうございます!!2人が幸せになれてとっても嬉しいです…!!ソランさんの新作楽しみにしてますね! (2020年12月7日 17時) (レス) id: bc64499760 (このIDを非表示/違反報告)
ソラン(プロフ) - 皆さんお待たせいたしました!本当に長いことお待たせしてしまい、大変申し訳ないと思っております…(T ^ T)全部書き切ることができてスッキリしました!またちょっとお休みして、新作も書き進めて行けたらなと思います。ですのでまたいつかお会いしましょう〜 (2020年12月7日 12時) (レス) id: 8103dd882b (このIDを非表示/違反報告)
うみ - この作品、一番好きだったので続編とても嬉しかったです。ほんとにキュンキュンします。テテカッコ良すぎです!更新頑張ってください! (2018年3月5日 7時) (レス) id: 8e28afa81e (このIDを非表示/違反報告)
alexandrite_bbc(プロフ) - 両作品とも、ほんとに大好きです(;Д;)(;Д;) (2017年9月27日 16時) (レス) id: 1a1f2fe310 (このIDを非表示/違反報告)
どぅぶ - キュンキュンしすぎて死にそうです。大変ですが更新頑張ってください!! (2017年9月11日 2時) (レス) id: 1b67b0d428 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ソラン | 作成日時:2017年5月14日 21時