□ ” ナミダ ” ページ12
＿＿＿ああ、やっぱり、10年が経っても彼の美しさは変わらない。
丘の向こうで海を見渡すように立っている美しい年長者に新人の彼は見入っていた。光がよく当たる丘の上、彼の特殊な髪の毛は光を赤、緑、黄と、様々な色味を見せて、10年前と変わることなく、フォスフォフィライトの眼を輝かせた。後姿から覗く、彼の横顔は、儚げで、純粋で、まるでその透明さを表情に散りばめたように美しい。
年長者は背中から、背後の新人に投げかけた。
「会いたかったんだろう？ もっと近くに来ればいいじゃないか…」
岩陰に隠れるように美しい先人を見ていた、薄荷色の新人はピクリと肩を揺らし、傍から見ると、まさに恐る恐ると言った調子で再会を待ちわびた彼に、ゆっくりと近寄っていく。
「えっと…あ、あの、その…
僕と会ってくれてありがとう……。君にずっと会ってみたくて…すごく、嬉しくて…」
太陽の光で七色に輝く髪を風に任せて、年長者は尚無言で新人の言葉を待っている。薄荷色の新入りはやがて何も言わなくなり、静かな沈黙が降ってきたことを確認すると、淡い想いと喜びと、少しの恐れが入り混じる薄荷色の瞳にその端麗な顔を晒した。
彼の白い頬には、白黄に輝く液体のようなモノが、静かにつたっている。新人の顔が、不安と、些かの好奇心に駆られたように歪んだ。
「二週間…」
「…え？」唐突な彼の言葉に、あどけなさが抜けない幼い新人の視線が揺らぐ。
「その間、フォスフォフィライト、君は、自分の身体を傷付けていたそうだな。それも、何度も何度も……＿＿＿」
アクロアイトの瞳が、青色に光った。
名前を呼ばれた新入りは、やっと我に返って、その視線の異変に気がついたようだった。あの孤独な年長者の瞳に篭った、純粋な悲しみに。まるで、生まれたての幼子のように目を細める彼に、焦りを覚えた新人は、彼の居る丘の上へ、必死の思いで駆け寄った。
「ご、ごめん！ 君を悲しませるつもりはなくって！ 僕はただほんとうに、君に会いたかっただけで…＿＿＿＿」
ごめん、ほんとうにごめんなさい。
だからどうか、僕を嫌いにならないで…！
フォスフォフィライトの言おうとしたその言葉は宙に消えていった。いつの間にか飛び散っていた、自分の薄荷色の破片に、彼は驚いて、そして瞬時に理解した。何かに撃たれたような感覚。自分は”彼”を目の前にして砕け散っている。
ああ、これはきっと、バツなのだ。
彼の悲しい顔が、頭の中に焼き付いた。
「ごめん…」
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ワッさん+a(プロフ) - ベルモットさん» お久しぶりです！後半読んでくださったんですね…！文字数が多めなのでなかなか読み進めづらいのではないかと不安でしたが、とても安心しました…！数々の勿体ないお言葉ありがとうございます！今後の制作の上、とても励みになります！！ (2020年9月28日 19時) (
レス) id: 17ce48cdec (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - 恩着せがましかもしれませんが、実は私も個人的に、夢小説を投稿している身で、この小説を読み、語彙欲は必ず要ると再確認出来ました。尊敬します。 (2020年9月28日 2時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - お久しぶりです。後半の話を読みました。シンシャが嫉妬したり、夢主を心配する場面や感情の葛藤が丁寧に書かれていて凄いと重いました。 (2020年9月28日 2時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
ワッさん+a(プロフ) - ベルモットさん» 作品をお読み頂きありがとうございます！ 主人公の関係性などの設定にはかなり拘って制作しておりますので、その点に注目していただけたこと、とても嬉しく思います！ これからも少しずつにはなりますが、更新して行きますので、応援のほどよろしくお願い致します！！ (2020年8月26日 9時) (レス) id: 2ac34ed691 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - ワッさん＋aさんの夢小説作品を読みました。夢主のキャラ設定が、すごく凝っていますね。元パートーとの関係性が好みでした。 (2020年8月26日 8時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ワッさん | 作成日時：2019年1月8日 6時
