誰が為… 2 ページ32
次の瞬間だった____
私の脳裏に映像が浮かび上がる。
カラリと音を立てて私と太宰の丁度中央あたりに安全装置の外された手榴弾が突然転がり込んできた。手榴弾は大きな火花を上げて私達の肉を割いて焼いて行く。煙の後に、私と隣にいた太宰が焼け爛れた皮膚や、頭から血を流して倒れていた___
そして、数秒後の未来の世界から目を覚ました否や、私は周りを見渡した。そこには人影はなく、たださっぱりとした街の景色があるだけだ。だが未来観測がされた以上、この景色は数秒後に手榴弾の煙に覆い隠される。
「済まない、太宰」
咄嗟に太宰の襟元を掴み、勢い良く爆心から離れた位置の後方に投げ飛ばした。困惑する太宰の身が地面に着地したとき、聞いた事のあるカランと乾いた音が足元からした。
未来観測時と同じ型の手榴弾だ。
足に力を込めて前方飛び、受身を取る。私が狙われている場合、太宰と同じ後方に逃げたならば、第二弾が飛んできた瞬間完全に避けきることが出来ず、太宰を巻き込むことになるからだ。激しい火花と光を発して手榴弾が爆発する。
破壊されたコンクリートが爆風に素早く飛ばされガードした私の腕が血を吹き出して裂けた。
其れから数秒と経たず、続いて、拳銃の重たく乾いた音が聞こえた。それとほぼ同時、頭蓋から脳漿が吹き出す音が耳の機能を蹂躙する。傷口を押さえながら、銃声が聞こえた方向を見ようと視線を泳がせた。
未来予知はしていないが、
何故だか酷く"悪い予感"がした。
私の視界に映ったのはAだった。
其れは髪や独特の目の色、繊細な指先に至る迄、紛れもなく井伏Aで有ったが、憎しみと嫌悪を直接瞳に写し取ったような視線と、『その行動』だけは、如何しても、どう考えても、得体の知れない別物に見えてしまう。
丸で、彼女の皮を被った別人。
「此処に来る事は想定済みだった…」
処々に新鮮な赤色を付け、仕事服らしい真っ黒な外套を羽織ったAらしき人間は、暗くも透き通る、無機質で、余りにも美しい声を響かせて、規則正しい足音と共に、此方へ歩み寄った。衝撃的な事実に何とか目を背けようと、太宰の顔を見やったが、何時になく呆気に取られた表情だけがそこにあり、より一層、目の前の異様な光景が事実であることを思い知らされる。彼が佇む後方にボロ布を纏った死体が一つ。正確に頭を撃ち抜かれていた。
そして、太宰の方を向いていた拳銃が私の方へ向き、また一発。
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作者名:ワッさん+a | 作成日時:2018年5月21日 23時