悲しい哀しさ 2 ページ29
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其の空間から二人、織田と芥川が去った後、銀髪の男が『ジイド』が口角を上げ、歪みきった不敵な笑みを浮かべた。
「素晴らしい異能力を持っている。貴君と同様に。…あの男は貴君の何だ?」
「何でもないよ唯の世話焼きな同僚なんだ。
それで、貴方がミミックの長、アンドレ・ジイドで間違いないかな」
「嗚呼そうだ。ポートマフィアが幹部、井伏A。”地に堕ちた”貴君が我々を救う人間か」巧妙な笑みを彼女に向けて、ジイドが云った。
少し間を置いて、顔色一つ変えず井伏は答えた。
「……貴方達が望むなら。
本当の事を云うと、私は貴方達が好きじゃないんだ。何故そんなに死に急ぐのか全く理解出来ない。罪を犯しても”生き方を変えることだって出来る”のに…。そうしようと、努力もせず挙句、殺しに走る」
陽の光を帯びていたAの瞳が一つ一つの言葉に重みを掛けるようにゆっくりと哀しく細められ、光を失い、濁って行く。
ジイドはその眼をじっと見据えてから、低く唸るような声で嘲笑した。
「………A、貴君は一つ嘘を吐いている。
俺には判る、貴君のその眼は生命を背負った眼だ。誰にも触れさせることなく、孤独に抱える者の瞳だ」
「何故だと? 貴君に判るのか? 我々の苦しみが。死にしがみつく事しか叶わぬ生きる事への苦しみが…」Aを滑稽だと罵る様な低い冷笑に、その場の物質が呼応していた。そして、ジイドの表情から嘲た笑みが消えて行き、何もかもが抜き取られたような生気のない瞳で言い放った。
「…織田作之助と云ったか。あの男の眼からして只の同僚では無いな。あの男は、貴君の何だ?」
背筋に悪寒が走り、Aの表情が一瞬滞った。再び不敵な笑みを浮かべたジイドが云う。
「…何かを失えば__貴君は我々を理解するか?」
”例えば、命に最も近いものを”
__
____
私が帰還して2時間後、
本部にAが帰還したと組織に報告が周り、私と太宰が組織ビル最下階に駆け付けた。
傷一つ負っていない筈の彼女の表情は、井伏Aとは到底思えない程に暗く、その瞳は異常に虚ろだ。周りから見れば気付かないような異変であるのか分からないが、誰も彼女に疑問を投げ掛ける者は居ない。
暫くして、少しの間彼女の表情を伺っていた私は、違和感を覚えて、「何かあったのか?」と尋ねようとした。その瞬間、驚くべき彼女の行動に、唖然とした。
最下階一帯の空気が一斉に淀めく。
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作者名:ワッさん+a | 作成日時:2018年5月21日 23時