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消失の命令 2 ページ24

───それから私とAで安吾の痕跡を辿った。宿泊施設に何件か電話した処、一件、前まで安吾が泊まっていたホテルが引っ掛かった。



「そっち何か有った?」

「いや……」


整えられたマフィア所有のホテル。安吾の痕跡の残ったこの部屋は彼らしくも整えられていて、清潔感があり、何より物が少なく、捜し物が有る時には直ぐに見つけられそうな空間だった。私は何気もなく天井を見詰め、そして部屋の中央からぐるりと部屋中に目を遣った。そうしてから暫くの事だ。不意に、彼女から声が掛かった。

「ねぇ、この椅子さ……」と、丸椅子を抱えた彼女が私に歩み寄った。私は首を傾げる。如何にも神妙な顔付きで私の目の前に立ったAは、じっと丸椅子を見てから、徐に目の前に置いて、続いて頭上を指差した。


「丸椅子に人の靴の裏が擦れた跡があったんだ。それで、之に乗ったら丁度『あれ』に届くよね」


彼女の云うが儘に私は頭上を見上げた。天井に正方形の隙間がある。成程、椅子に乗っても彼女では手の届かない域だ。
私はその椅子に足を乗せ、同色の板が嵌ったような其れを片手で押してみる。蓋が取れるようなカコンと云う音がした。上手く其れを外すと天井裏を手で探る。指先に金属に当がたるようなヒヤリとした感覚があった。その物体を暫く手で確かめて見るとどうやら箱型をしている様だ。私はその箱状の物に手を伸ばし引き摺って胸前まで運び中身を確かめるべく振ってみる。

───その時、映像が見えた。



私の胸に一発、彼女の頭に一発、確実に銃弾がめり込んだ。銃弾はいとも簡単に私達の躰を通り抜け、肉と骨が裂け砕け、床から壁に向けて脳漿と肉片と血が噴き出す。私は前のめりに、Aは横に血雫の線を描きながら倒れて行く。背後の窓に映るビルを見ると其処にキラリと光るものがあった。スナイパーだ。



五秒前後の映像を見た後、私は腰を低くし椅子から飛び上がった。直ぐ横に居た彼女の躰を抱えた瞬間に長距離を飛んだ弾丸が窓を突き抜けた。咄嗟の勢いで抱えた彼女と共に窓と窓の間の目認されない位置へ移動する。


「…スナイパーだね」腕に抱えたAを見ると、何時の間にか前方に落ちていた鏡を拾い上げて狙撃された方向を確認していた。


「位置を特定された以上、場所を移しただろうな。此の部屋からは出よう」









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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 織田作之助 , 太宰治   
作品ジャンル:泣ける話
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作者名:ワッさん+a | 作成日時:2018年5月21日 23時

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