愉快なる友人と 2 ページ22
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其れから又安吾が加わり何時もの四人が揃った。四人とも仕事と他愛もない話をして、時間が止まっているような感覚に浸っていた。
私と太宰と安吾が話しているのを見てAは楽しそうに笑っていた。心底楽しそうに…。私も又、そんな穏やかな彼女の表情を見て自然と笑っていた。
「そうだ、写真を撮ろうよ」
安吾の鞄の中の塗装が幾らか剥がれた古い写真機を指差して、太宰が云った。「記念にさ」
「何の記念だ?」私が尋ねた。
「四人が此処に集まった記念。安吾の出張完了記念でも不発弾処理記念、本屋再開店願い、その他何でも」
「幹部殿の仰せの儘に」安吾が肩を竦めて云うと、鞄の中から例の写真機を取り出した。古いフィルムの使い古された写真機である。
「太宰、何故急に写真なんだ?」スツールに躰を傾けて脚を乗せ、写真機のフィルム越しにポーズを取る太宰を見て再び尋ねた。当人は、何でもない様で何かを隠すような謎めいた笑みを浮かべている。そして、暫く俯いて、私の背後辺り、丁度Aが居る辺りに眼を遣り、又ゆっくりと俯いて漸く応えた。
「何でもないよ、何でも善いじゃないか。偶々此処に何時もの通り四人全員が揃って、偶々其処に写真機があった。だから撮るに過ぎない。口実は何でもいいんだ。只、今の私達を残して置こうと思ってね………それだけ…」
「それだけだよ」自分に云い聞かせる様に呟いた声が私には聞こえていた。
何故、そんな風に云うのか。何故、彼女の方を向いたのか。一瞬、多くの疑問が湧いたが、其れは一つ一つ暗い中から浮かんで消えて行った。考えるのを諦めたのだと思う。誰も、他人の心の内を覗き見る権利など持っていない。私の周りを囲んでいる此の穏やかな時間も、他人に干渉し過ぎない上で成り立っているのだろう。太宰も安吾も、そしてAも、必ず見せられない何かを背負って生きているのかも知れない。
幾ら友人であれ、私は踏み入る事が出来ないだろう。増して、完全に腹を割ることも当の本人達には出来ない。勿論、私もだ。
そして、暫く時間を置いて、再び彼女を見詰めると、Aは柔らかく微笑んだ。
──只、彼女が抱えている強大な何かを私が支えても善いのなら、半分以上背負いたいものだ。それで彼女が、何気も無く、幸福に笑い巫山戯る事が出来るのなら…
尚更───
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作者名：ワッさん＋a | 作成日時：2018年5月21日 23時
