第十七話 ページ17
私は、優秀な潜入捜査官だった。
女の潜入捜査官というのは珍しくはないが、なかなか難しいものがある。
女の潜入捜査官の対象は基本男性だ。
肉体的な力の差を考えると、少し腕の立つ相手ならば負けてしまう可能性がある。
だからこそ肉体的な戦いに持ち込まれる前に、怪しまれる前にカタをつけなければならない。
それには、武器が必要である。
それは色気だったり、話術だったり、アルコールに強かったり…
アルコールで絶対に酔わないというのは、強い武器となる。
赤井さんとの飲み比べに負けるのは、私のプライドが許さない。
「どうですか?」
『美味しいです…』
「実は私はバーボン一筋でして…これは、数あるバーボンの中でも気に入っているんですよ」
『そうなんですね』
私達は他愛もない話をしながら、同じペースで飲んでいった。
決して、早いわけでもないが、遅いわけでもなく、チェイサーがない中このペースでロックを飲み続けるのは結構くるものがあった。
『ロックで飲むのがお好きなんですか?』
「特にこだわりはありませんよ。割る時もあります」
『今日はロックの気分なんですね…』
「はい、そんなところです」
『沖矢さん…お酒お強いんですね…』
「いえ、そこまでではありませんよ。Aさんこそ、お強いみたいですが?」
お、開眼した…
こわいこわい(笑)
ちょっと…怪しまれてるな、これ
アルコールが回ってないわけじゃないが、私はどんなに飲んでも正気を失ったり、寝てしまったりはしない。
もともとの体質もあるかもしれないが、訓練の賜物である。
赤井さんもお酒には強いだろう…
このまま酔わずに進めて行ったらどうなるだろうか…
こいつザルなのか?で納得してくれれば楽だけど、変に勘繰られるのも自分の首を締めるだけだ
赤井さんとの飲み比べはやってみたいところだが、一旦置いといて、今日はそろそろ酔ったフリでもして切り上げるか
『わたし…もう、かなり、酔ってますよ…?』
「そうだったんですか。態度が変わらないので全然気づきませんでした」
『んん、少しふわふわした感じがします…』
「大丈夫ですか?」
『…はい、まだ大丈夫ですけど…そろそろお酒は辞めておきますね』
「それは残念。貴女と飲むお酒はとても美味しかったですよ」
『ふふ、私もです。また、ぜひご一緒させてください』
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作者名:海扇 | 作成日時:2019年7月18日 17時