恋風乱舞 2nd【ars M.A】 (ページ28)

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63.ヒトリノ・ヨミチ。ページ28

ホントは

ホントはね、今すぐAちゃんちに行って抱きしめたい位だったけど。

だけど、こないだ謝ったとは言え無断でオトコの家に外泊させちゃったってゆー負い目もあって、そこはグッと我慢した。

だって、せっかくお母さんにちょっとは信用して貰えたかもしんないのに、夜中に突撃とか...あんまり良くない気がして。

『遅くなっちゃうから今日は行けないけど、すぐに会いに行くからね』

断腸の想いで、そう送って

でも、既読がついた途端にAちゃんの顔が浮かんで

『好きだよ』

指が勝手に打った、って感じだった。

その言葉の横に既読がついて、あ、読まれた...って思ったら妙に恥ずかしくて変なスタンプ送っちゃう。
照れ隠し。

あー、送っちゃったー！読まれちゃったー！ってドキドキしてたら自分ちの駅に着いて

まだ満員のまんまの電車を「すいません、すいません」ってペコペコしながら降りる。

改札を通って、いつもの道。

スマホはポケットに入れる事無くずーっと、手の中。

立ち止まり、それをジーッと見つめる。

「...良いかな...良いよね...」

もう電車じゃないし。
誰にも迷惑かけないし。

俺は、道の端っこに寄ってスマホを耳に当てた。

無機質な呼び出し音のはずなのに、この音の先に君が居るんだと思ったらまるで可愛い音楽みたいに聴こえる。

「もしもし...？」

そして機械を通して聴こえる君の声は、いつもと少しだけ違ってて

何度、電話してたってなかなか慣れる事はできないんだ。

「もしもし、ごめんね。...まだ起きてた？」

さっきまでLINEしてたんだから、起きてるに決まってるんだけど

「はい、起きてました...あの...っ！」
「ん？あ、何？」
「返事...なかなか送れなくてごめんなさい...」
「返事？」
「...さっきの...」

さっきの......あっ！？
『好きです』！？

「やっ！あっ！いやっ、あれはっ！流してくれて良いっ！」
「え...？」
「何かっ、ね！？指が勝手にってゆーか、感情の昂りとゆーか...恥ずかしいっ！流してっ！」
「...無理です」

俺が夜道で1人、ワーワーしてたら

Aちゃんの静かな声。

「流すなんて...無理です。嬉しくて...スクショしちゃったくらいなのに...」

あぁ...もう...

「Aちゃんのバカ...」
「え？」
「せっかく我慢してんのに」
「...先輩？」
「会いたくなるでしょ？」

会いたいし

抱きしめたいし

チューしたい。

また苦しくなって、Tシャツの胸元をギュウっと掴んだ。