百三十六 ページ36
『なーにこれ』
「…さぁな」
『私を恨んでた相手とは思えない』
綴られた文字は少し滲んでいた。水でも零したのかなぁなんて笑ってみるけれど反面目頭は熱くなる一方だ。
たった一言。
その一言に込めた意味なんて考えなくても分かった。
(ーー…最初から分かってたんだ)
両親に何もいい思い出のない私からしたらあの時の死や火事はそんなに大きなものではないけれど、兄様からしたら大切なものを一気に失った日で。
私は何も知らないと、知っていたのだろう。だけど恨まずにはいられなかったんだ。
……そうでもしないと自分を保てなかったんだろう。
だからあの日私に刃を向けたんだ。
それに応えるように私も兄様へ刃を向けた。
でも兄様は分かってたんだ。
これを私に向けたところで何も変わらないって何も意味がないって。
きっと葛藤してたんだ、そして決めたんだ。
「…やっと、父…上と母上…に、会え」
私に斬られることを。
あの時の言葉が恨みじゃなかったのは覚悟を決めてたから。
ーーーそれは全て私の憶測でしかない。けれどこの一文からは沢山の思いが汲み取れた。
「A」
『ん?』
「これ、兄貴のだろ」
握られた手が離されるとその中には
『まが…たま…』
首元にぶら下がってたそれは兄様と一緒に消えたと思っていたのに、ここにある。
十四郎ちゃんへ目をやれば左手で頭を後ろを掻いた。
「お揃いだったんだろ兄貴との」
それと指さされたところに揺れる水色。知ってたからなのか遺書と一緒に引き取ったと彼は言う。
…嗚呼もうこんなんじゃ
「泣きたきゃ泣け」
『でも…っ』
「言ったろ」
___あとで拭ってやっからって。
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年10月13日 21時