百二十六 ページ26
右目の視界が失われて数日。
まだ目が痛むため包帯が取れない。あの日から日替わりで隊士達がお見舞いに来てくれるのだけど、みんな複雑そうな顔をする。
一人だけ顔を出さない人もいて。
『十四郎ちゃん…』
口にした名前は音を立てて落ちた気がした。
返事をしてくれる相手がいないとこんなにも名前を呼ぶことは虚しいものなのか。…ちょっと泣きそう。
きっと十四郎ちゃんの事だ、今回の傷は自分が気付けなかったから無理させたからなんて理由をつけて自分を責めてるに違いない。
『ほんっと責任感だけは一丁前なんだから…』
「誰の話してんだァそりゃ」
『旦那…』
「A!」
「Aさん!」
顔を出したのは万事屋一行。見舞いだとか言って差し出された花束はその顔にも目にも似合わなくて笑ってしまった。
なんだよとか腹立つとかなんとか言ってる気がするけどとりあえずスルーして、大丈夫かと言いたげに首を傾げる神楽ちゃんの頭を撫でた。
新八くんの頭も撫でとく。
「体の方は平気なんですか?」
『まぁ体はね。目がこんなんだけど』
「どっかの片目野郎と一緒ネ」
『アレとは一緒にされたくないかなぁ…』
一瞬浮かんだ顔に苦く笑う。あんな過剰攘夷志士と一緒だなんてたまったもんじゃない。
……まぁ言うこともわかるんだけどさ。
お見舞いの品に手を出そうとする神楽ちゃんに新八くんが怒るが、貰いすぎて食べれないからといえばキラキラと目を輝かせた後それを食べ始めた。
「…で、誰が責任感一丁前なんだよ」
『んー?わかってて聞いてますよね、それ』
「多串くんだろ、どーせ」
『土方ですよ、旦那』
「気にすんと老けんぞ」
『うっせェジジイが』
「うわ!銀さん傷ついた!ガラスのハート砕け散った!」
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年10月13日 21時