この世界の片隅に3【土方十四郎】 (ページ21)

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百二十一ページ21

「とんだ兄不幸もんだな、お前は」

『そしたらアンタはとんだ妹不幸もんだね』

「半分も血が繋がってるとか吐き気がすらァ」

『ンなもん天国の父上に言えよ』

いや地獄かと言えば腹を蹴られた。
くるりと体を捻らせ柱を蹴れば肩をかっ捌く。

綺麗にそれは入ったようで赤が噴き出した。

外ではドンパチやってるらしく物騒な音が聞こえる。どうやら思ってた以上のもん巻き込んで、規模を大きくしてたらしい。

復讐一つで何してんだコイツは。馬鹿馬鹿しい。

『今面白くねーんだろ？』

「何言って」
『思ってたのと違うって顔してるけど』

図星だったようで一瞬力が緩んだ。その隙に腹を蹴り上げて今度は足に一発入れる。……頭から血、被っちった。

鈍い音を出して床に叩きつけられた兄様の顔は悔しそうに歪んでいた。

本当は私が泣いて喚く姿を、絶望した姿をもっと見たかったんだろうけどそんなに察しは悪くない。

雪さんの姿を見て、雪さんの娘だと知ればその先のことなんて分かりきったことだった。

……まぁ分かったってだけでまだ理解はしきれてない。本音を言えばまだ頭は混乱しているんだから。

でも、迷うことはできない。
私のすることは一つなんだから。

『アンタが私を仇だというように私もアンタが仇だよ』

「フッ、初めての兄妹喧嘩がこれか」

『まぁそれは最後でもあんだけどな』

目が合えばどちらともなく笑う。こうして目を合わせて笑ったのはいつぶりか、少し嬉しかった。

けれど、その喜びも最後。

『さよなら兄様』

刀を振り上げる。

と同時、兄様の顔が歪んだ。後ろへと足を引こうとしたがそれは間に合わず、右の視界が消え激痛が走った。