菫と果実《Kei.i》 (ページ46)

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・四十五ページ46

貴方「慧様、」

慧「ごめんね、こんな、

痛かったでしょ？」

そう言って私の縄を解いてくれる

慧「あーぁ、痕、付いちゃったな、痛くない？」

また優しく傷痕を撫でる

それが心地よくて落ち着く

貴方「全然平気です」

慧「そう、」

微笑んでくれた慧様はもう一度私の頬を撫で、

そして私の頭上へと目線をやった

慧「これ、

涼介に捨てとけって言ったのに」

貴方「ふふ、ちゃんと届けてくれました」

慧「そっか、

似合ってるね」

貴方「さすが慧様ですね、」

慧「ふふ、でしょ？」

慧「着物と一緒につけて欲しかったけどね」

貴方「あぁ、、、

あれは小梅に渡しました

私は愛を見つけたから

次はあの子に本当の愛を見つけて欲しくて」

慧「小梅ちゃん、かぁ、

もう水揚げするの？」

貴方「いえ、年がまだ足りないので

でもきっとあの子はわっちよりいい花魁になりんしょう」

慧「ふふ、

そうかな？」

そう言って微笑んだ後

真剣な表情になる慧様

その顔を見ると胸が大きく鳴り響く

慧「これ、涼介から聞いた？」

慧様は簪を撫でてそう聞いてくる

貴方「はい、」

慧「じゃあさ、そういう事なんだよね？」

・

慧「A、俺が君を買ってもいい？」

その言葉は私の思い全てを貫いた

とても強く

決してかっこいい言葉じゃない

だって、“ 買う ”なんて普通の人は嫌だと思う

でも私にはとても素敵な言葉

貴方「はい、

わっちを買っておくんなし、慧様」

私を籠の外へ出してくれる

素敵な言葉

互いに合図もなく触れ合う唇

それは甘くて果実のよう

慧「愛してる」

貴方「私も」

菫の華は枯れることなく咲き続けた

それは

私が愛を見つけた証拠＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

・

「菫と果実」終