菫と果実《Kei.i》 (ページ45)

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・四十四ページ45

貴方「慧、様、

なんで、」

慧「目の前で愛する人が愚弄されて

耐えられる人はいないよ」

そう言った慧様は私の頬を優しく撫でた

その手は私の大好きな温かい手

お菊「何を？

慧様、そんな女に触っては手が汚れてしまいます」

慧「言ったよね？

愛してる人を愚弄されて耐えられる人はいないって

俺の大切な人をこれ以上傷つけるなら

いくら大切な商談相手の娘だってただではおかない」

お菊「え、商談、相手の？娘？

私はあなたの婚約者です！

私だって慧様を愛しているのに？

あなたの妻は私ですよ？」

慧「その事だけどお父さんに話して婚約は無しにしてもらうよ」

お菊「そんなこと、

いいのですか？商談が無くなっても

とても大切なものなのでは、？」

慧「別に、一からやり直すことは出来る

俺は一人じゃない

俺がどんな選択をしても味方でいると言ってくれる物好きな奴もいる」

慧様の目はとても真っ直ぐで

その背中はとても寛大だった

すぐ横を見れば強い眼差しで慧様を見ている山田様もいて

私は改めて慧様の強さを知った気がした

慧「俺は生涯愛する人と生きていく

もう迷わないし

もしその人とは生きていけない未来になったとしても

その人を傷つける人とは一緒になる気は無い」

お菊「何故、その女の方がいいのですか？

私だってあなたに尽くしたのに

何故、私を見てくれないのですか？」

そのままお菊さんは目に溜めた涙を溢れさせその場にしゃがみ込んだ

確かに酷いことを言われた

それでも今はっきり分かったことはこの人も慧様を心から愛していたということ

そのまま従者に支えられたお菊さんは私を鋭い目で睨み悲しそうな顔をした

間違いなくあの人の思いを壊したのは自分なんだ

でも誰かを傷つけてしまっても

慧「A、」

私はあなたと居たいんだ