菫と果実《Kei.i》 (ページ41)

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慧 side

お菊「慧様、本日の晩御飯はお菊がお作りします」

慧「それは楽しみだね」

そう言えば嬉しそうに微笑む俺の許嫁

契約結婚など本当は望んでいなかった

いや、望まなくなった

前は別に結婚とかも興味無かったから

契約結婚と言われても何とも思わなかった

それなのに気付いた

この人といたいと思う気持ちに

それなのにそれは遅すぎた

初めはただの暇つぶしのつもりだった

涼介に噂を聞いて

ただ気になった

いや、気になりもしなかった

でも初めてあった彼女は

どこか俺の心を掴んだ

ただひと目見ただけで自分と似ていると思った

それはなんとなくだけど俺と似た目をしていたから

生きる意味はわからなくて

ただ自分の抱える責任に押しつぶされる

その孤独さを彼女は知っている気がした

だから手放したくないと思った

もう一度

何度でも彼女に会いたいと思った

彼女と人生を共にしたいと思った

触れれば触れるほど温かくて優しい温もりが消えなかった

彼女が笑ったら嬉しかった

彼女が寂しそうな顔をすればその手を掴まずにはいられなかった

彼女のために買った簪の木箱は

一度も開けられず涼介によって処分された

本当はお菊が欲しいと言ったが

どうしても渡せなかった

それは俺の彼女を思う全てが入った物だったから

それを違う誰かに渡すことは出来なかった

でもその思いを伝える相手だってもういないんだ

「慧様！門の外で怪しいものを捕らえました！」