菫と果実《Kei.i》 (ページ40)

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・三十九ページ40

貴方「小梅、これを」

小梅「これ、！」

それは私が大切な人から貰った

大切な宝物

小梅「これ、いいですか、？」

貴方「ふふ、お前にはこれで立派な太夫になって欲しいもの」

小梅「これ、ずっとA姉さんが着てたのに」

貴方「ふふ、わっちもね

これはわっちを育てた花魁に貰ったの」

小梅「え、？そう、なんですか？」

貴方「わっちは水揚げの日、これを初めて着て花魁になった

お前もきっといい売れっ子になるから」

小梅「わっちは、A姉さんみたいになれる自信はありんせん」

貴方「それは誰だってそうじゃ

わっちだって菫さんのようになれるわけないと思っておった

いや、今でも敵わん」

貴方「自分なりの花魁になれば良い」

小梅「自分なりの花魁に、」

小梅「はい！わっち！A姉さんに負けない花魁になりんす！」

貴方「言うではないか

楽しみじゃのう」

小梅「はい！」

貴方「でも絶対愛は大切にしんさい

菫の花言葉は貞節、愛」

小梅「て、ていせ、つ？」

貴方「ふふ、今度、朝雲太夫にでも教えてもらいんさい」

小梅「A姉さんは教えてくれないでござんす？」

貴方「また本当に意味が知りたくなったら

それまでは“ 愛 ”の方だけ覚えておきんさい」

小梅「は、はい、」

そう言って私は小梅の頬を撫でた

その頬はとても柔らかくて温かい

まだ無垢な小梅がこれから辛いことも経験していく

それはとても心苦しい事だけれど

小梅がこれからそれを乗り越えて成長していくのが楽しみでもある

貴方「ふふ、わっちは良い妹を持ったのう」

小梅「わっちはとても素敵な姉さんに育てたられたでありんす！」

そう言っては輝く瞳

それは私にとってとても愛おしい

力強い瞳だった