愛のサンプル (ページ7)

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6話ページ7

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「ちょっと、私職員室行ってくる」

「もう行くの！？まだ届いてないんじゃない？」

「気になるから！ちょっと見てくるだけだって」

うちの学校には職員室にお届け物ボックスがあって、そこに落とし物が集まっている。
誰かが拾ってくれていたら、あるのはきっとそこだ。

帰り道、探しといてね！と、友達に叫びながら、私は職員室まで走った。

「やっぱ、ないよなあ……」

プラスチック製の箱の中をガサガサと探し、一言。一つ一つものを取り出したりしてみたけど、やっぱりあのフォルムのストラップは影すら見当たらない。
予想はしていたが、一つ目の希望が薄くなったことは悲しい。

「…また後で、来てみようかな」

1人ポツンと呟くと、尚のこと寂しく思える。
箱の中に一つ一つ物を詰め直していた、その時だった。

「もしかして、これ？」

後ろ。
斜め上あたりから、落ち着く声が聞こえた。
私の知らない人の声。

不思議に思って振り返ると、そこには全然知らない人が立っていた。

「え、と…？」

「あ、ごめんなさい。これ、落としたかなと思って」

差し出されるまま彼の掌を見ると、そこには見間違えるはずもない、たった今探していたストラップがのっていた。

「あーっ！これ、私のです！」

場所も身分も弁えずに、私は大きな声で伝える。
あっ、と思ってからにはもう遅い。職員室のドアから覗く教師はじとりとした目で私を見るし、目の前の男の子はくすくす笑ってるし。
上履きを見ると、彼の学年が一つ上の二年生であることに気がついた。先輩に半タメ口を使ってしまったことも相まって、私は顔を赤くした。

「す、すいません！これ、ありがとうございました！」

早口で捲し立て、強引に彼の掌からストラップを引っ掴むと、恥ずかしさのままに私は走った。

そう、この時。

私と、彼が出会わなければ。

もう少し、何か、違ったはずなのに。

走り去る私の背を見守る彼の口は、小さく弧を描いていたんだ。