【文スト】私が成りたかったのは彼女でなく彼【成り代わり】

噺、２７ ページ27

「･･････」

探偵社の部屋の隅で、私はボロボロになってしまった兎のぬいぐるみに顔を埋めていた。




「全く不甲斐ないねェ 妾の能力がなきゃ今頃揃って土の下だよ」

そう。この方、与謝野さんに助けてもらったんだ
あのまま、死ねていたら私は元に戻れたのかな･･････


まぁ、そんなこと今考えたって解決できることじゃないか。


「工合は如何だ」

「社長」


その言葉に、私は少しだけ頭をあげて福沢さんを視界に捉えた

「申し訳ありません 俺が居ながら」

国木田さんがそう云うと


「佳い 少し出る」

「でも今外出は･･････」


中島さんの止める声を聞かず、バタン扉を閉めて出て行ってしまった

「ハァ ありゃ相当鶏冠に来てるね」





与謝野さんがこちらに来た

「髪、バラバラだけど妾が切ッて遣ろうか？」

「･･････大丈夫。このままで」

「そうかい。･･････ま、ゆっくりしておきな」


「はい」


与謝野さんは、頭を数回撫でてくれた。



暖かい手は、私の心の中にある黒を少しだけ、溶かしてくれた様に感じた。





そのあと、中島さんに姐さんの元へ行くか聞かれたが、私は断っておいた

今姐さんに会うと、心が押し潰されそうな気持ちになってしまいそうだから






綿が飛び出て、布が無くなってて、少し黒くなってしまったぬいぐるみ

携帯と同じくらい、大事なものなのに。




「はぁ」





何度目か分からない溜息が、また口から零れた

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