今日もあの子と【2j3j】【短編集】 (ページ6)

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Aちゃんは私が黙っていることを疑問に思ったのか
Aちゃんはきょとんとしている。

『サラちゃん？どうしたの？あ、も、もしかして浴衣変だった？！』

自分の浴衣姿を不安になったのか
あわあわと聞いてくる。そんなわけないじゃない。

「ち、違うよ！めっちゃ似合ってる！可愛い！さすが星川の自慢の彼女！」

ふへへと満足気に笑ったAちゃんは可愛くて。きゅんとする。

『もーすぐ、花火だ、ね』そう言った途端
ごほごほと苦しそうに咳をする。

「大丈夫？！！」と駆け寄ると

『うん、もう慣れっ子になっちゃった』
そう言ってAちゃんはぐったりともたれかかる。慣れっ子なんて言わないで。

怒りたい気持ちだったがぐ、と抑え
笑顔で繕う。最期になるかもしれないんだから。
毎回楽しく終わりたいよね。
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あれからAちゃんはちょっとしんどくなっちゃったぽくて、ベットを少しだけ起き上がらせながら雑談していた。

しばらくして、どんっと耳に響く音が聞こえる。

「わ！Aちゃん！めちゃ綺麗、やばくない？｣

『ふふ、そうだね、サラちゃん、綺麗…好きだよ』

「んー？なんてー？あ！また上がった！」

Aちゃんは、花火に夢中になっていた
星川の浴衣の袖をぐいっと引っ張る。
予想以上に力が強くて驚く。
こんな力、最近でてなかったのに。
耳の近くに顔が近づく。

『サラちゃんは私の一番、一番大好き。』

「え、Aちゃ」

瞬間、心拍が止まったことを知らせるブザーが鳴り響く。たくさんのお医者さん、看護師さんが入ってくる。真横で突っ立っていることしか出来ない。

花火が打ち上がっている間、Aちゃんはなんて言っていた？私は、なんて返していた？
花火に夢中であまり聞いていなかった。
思考がショートしそうになる。
しばらくしてお医者さんに聞かされた言葉。
1番聞きたくなかった言葉。

────Aさんは、亡くなりました。

親さんに会って、付き合っていた事も、
最期の言葉をあまり聞けなかった事も、
全部話した。誰も星川のこと責めなかった。
でも、後悔だけが募っていく。

お通夜にも、お葬式にも行ったはずなのに。
何も覚えていない。