姉愛［42］｡上鳴電気｡ ページ42
事に流され軽々しく同調する周りのモブ共｡
標的を見つけた途端後ろ指を刺す。
君達はいつもそうだ。すぐそうやって。
だから嫌いなんだ。君達みたいな人間が。
特有の揺れが止まったので電車が停車したらしい事が分かった。未だ唖然と膝を付いたままの痴漢男を鷲掴みにし、引きずって電車を降りた｡
｢さっさと警察連れて行こ｣
｢離せ糞ガキ！ 調子に乗るなァ!!｣
煩く喚く男を無言で蹴る。
調子に乗ってるのはお前だ。
｢待って………！｣
鈴の音のような声に制された。
無言で振り返ると先程の女性が立っていた。彼女の腕の中で眠っていた少年は、いつの間にやら起きていて｡
女性の左手をその小さな手で、握っている。
｢有難うお嬢ちゃん…助かったわ｣
｢ねーちゃんありがとう！｣
胸に何かが注がれた。
無視出来そうにない。
｢ちょっとそこの君。悪いけど
この男近くの警察まで連れて行って｣
｢えっ｣
言って、戸惑う男性に痴漢男を差し出す。
嫌だよと顔で訴えてくる彼。有無を言わさぬ目で睨めば渋々と言った感じで男を引き取ってくれた。
そそくさと去って行く男性を見届け。
2人の親子の元まで歩いて行く。
｢別に貴方を助けたくて助けた訳じゃないから。唯見てる私が気分よく思わなかっただけ｣
｢それでも助けてくれて｣
｢それに｣
また礼を言おうとした声を遮り、言葉を紡ぐ｡
｢あのままじゃ。この子にまで危害が及んでたかも知れないからね｣
屈んで明るい金髪の頭を撫でてやる。
黒いメッシュの少し入った柔らかい髪。
ふと、少年の顔にパァっと花が咲いた。
｢ねーちゃんめちゃ美人だな！
目もすっげー綺麗だ俺の好み！｣
……ん。んんん？
｢お姉ちゃんに突然何言ってるの！｣
｢だって姉ちゃん綺麗だし！｣
この子チャラいね｡
将来が心配だ｡
｢姉ちゃん名前は？ 何て言うの？｣
｢私かい｣
｢うん！｣
名前、名前か…………｡
苗字はあまり好きじゃないんだよね｡
あのクソ親父がどうしても頭に過ぎるから。
｢A。Aだ少年｣
名前だけ。教えておこう。
撫でる手を止め｢君の名前は？｣と聞き返した｡
｢俺は上鳴電気！ 宜しくなねーちゃん！｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1433人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よる。 | 作成日時：2016年9月21日 16時
