姉さん、愛してる。Ⅰ (ページ41)

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姉愛［41］｡最低最悪｡ページ41

　
　
　
『いつもの公園で待ってる』

焦凍の入学式があった昨日の夜。

私の携帯に簡潔的なメールが送られてきた。
要件だけを短く端的に伝える彼らしい文章。

人柄の滲み出たそのメールに私も短く分かった。とだけ返しておいた。

｢………｣

電車に揺られること数10分。

いつもは好ましいこのガタンゴトン、と言う揺れが今は人と密着するきっかけにしかならない。のでとても居心地が悪い。

満員電車とはいくら乗っても慣れないものだ。

おっさん独特の悪臭みたいなのも臭ってきてるし。一刻も早く早く降りたい。

開閉扉に寄り掛かりながら、時間の経過を待ち望んだ。

｢やめて下さいっ｣

……………？何だ？

微かに耳に届いた。女性の怯える拙い声。

首を回し声の主を確認すると。

男に体をまさぐられ抵抗出来ずに震える女性の姿があった。腕の中にはスヤスヤと眠る少年を抱えている｡あれでは少年を抱えているせいで抵抗出来ない。

………これはまた悪質な犯行だ。

｢クズが｣

一言吐き捨て。

痴漢男に忍び寄る。

艶めかしく動く薄汚い手を鋭く見下ろし、
男の手首を何の躊躇いも無く強く掴んで。

ボキィっ。

｢っぎゃああぁー!!｣

上向きにへし折ってやった。

｢いっいい痛てぇ～っ!!?｣

手首に走る激痛を宥めようとでもしているのか、左手でそこを擦りながら狭い電車内で蹲る男。

体を触られていた女性は私の顔を見て目をパチクリさせているだけ。

｢なっ何だ何だ！？｣

｢何が起こった！？｣

やっと気付いた周りの奴ら。

君達気付くの遅過ぎ。

｢何してくれてんだクソ餓鬼ぃ!!!｣

情けなくも泣きながら私を見上げる男。

何してくれてんだ？愚問だな。

大体、それはこっちの台詞だ。

｢貴方は何？痴漢するために電車に乗ってるの？こう言うか弱い女性の体を触って嬉しいんだ。抵抗出来ないまま怯える女性の顔を見るのが楽しいんだよね？｣

一息で言い切る。

唖然とする男を軽蔑の目で見下ろした。

周りの奴らは痴漢と聞いて｢嫌だー｣だの｢マジかよ｣だの｢最低｣だの、おっさんに向けて罵声を飛ばし始めた。

これが同調圧力と言うやつか。