姉愛［40］｡笑顔開花｡ ページ40
｢お姉ちゃん！｣
｢焦凍。入学おめでとう｣
颯輔の車から降りると、瞬足で抱き着いてきた私の弟。あれから色々あったけど私に向けてくれるこの輝く笑顔は全然変わっていない。
そこは喜ばしい。そこは。
私以外の人間に素っ気なく冷たく接するようになってしまったのは、どうしても喜べない。
喜ぶ事じゃないと思うし。
｢1人で大丈夫だったかい？｣
真ん丸とした頭を撫でながら聞く。
｢うんっ僕学校までちゃんと1人で来れたよ！｣
｢そう。頑張ったね。偉いね焦凍｣
｢えへへ〜｣
照れくさく笑う焦凍。
周りに花が咲いて見えるよ｡
そんなに嬉しいのかな。
｢あれ？ 西宮さんは？｣
｢彼なら帰ったよ。この後仕事があるんだって｣
｢へー。大変なんだねあの人も｣
どうでもいい感じで言いやる。
前は颯輔に懐いてたのに今じゃコレだ。
やっぱり喜べないや。
残念に思って白い髪に指を通す。
途端、耳障りな声が降って来た。
｢Aちゃん居るうぅー!!｣
｢…………涼チビ｣
煩いのが来た。
私に抱き着いている焦凍も｢変人野郎｣なんて言って顔を顰める。相当嫌われてるね。
｢良かったぁ！ 1年以上も入院したままで涼ちゃんずっと心配してたんだからぁ!!｣
｢分かったから取り敢えず黙って。耳に響く｣
｢ヒイィっ!! ごめんなさいごめんなさい!!!｣
軽く睨みつけると、目にも止まらぬ速さで土下座する涼チビ。
デジャヴを感じた｡
｢あっそうだ弟君｣
｢何｣
焦凍嫌そう。
｢あと2分で体育館に集合ってさっき放送が｣
｢分かった。じゃあ行ってくるねお姉ちゃん！｣
｢あ、うん。行ってらっしゃい｣
私と涼チビとで恐ろしく態度が違う。
最早涼チビを視界に入れないように私しか見ない焦凍が心配になってきた。体育館へ駆けて行く弟を見つめながら｢性格変わったな｣と呟いた。
私に対しては甘えたがりで差ほど変わってはいないけど、他人に対する冷たさが凄い。
｢何か弟君変わったね。キツくなったて言うか｣
いつものおちゃらけた表情ではなく、
真面目な顔付きでそう言った涼チビ。
初めて見る眼差しに少しだけ目を丸くした。
｢あの子にも色々あるから｣
｢……。そっか｣
涼チビはそれ以上深く聞いてこなかった。
あの子の火傷の痕の事とか、気になる事は沢山あっただろうに。それでも何も詮索せず私の隣に立っていた。
…………ふん。
｢少しは成長したみたいだね｣
｢え？ なになに何か言った？｣
｢別に｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1435人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よる。 | 作成日時：2016年9月21日 16時
