姉さん、愛してる。Ⅰ (ページ3)

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姉愛［03］｡存在誕生｡ページ3

苦しい。

｢Aはちょっと疲れてただけなの！だからっ……だから変な事言っちゃっただけで!! 悪気は無かったんだよお父さん！」

お願いだよ姉さん。

早く逃げて。要らないよそんな救済は。

私に関わっちゃ駄目なんだよ………。

貴方の住む世界と私の住む世界は違うのだから。闇と光の対に出来ているのだから。

必至にクソ親父を見上げる冬美姉さんを私も希うような目色で見つめた。

｢………ふん｣

不意に私の頭から手を離したクソ親父。

と言ってもその手付きは優しいものでは一切無いので、私の体は乱暴に床へ投げつけられた。

｢ありがとうお父さん！｣

安堵の笑を咲かせる冬美姉さん。

けれど。このクソ親父がこんなもので済ませるはずもなく。複雑に怪しく笑い、再び私の襟を掴み上げた。

と言うか触らないで欲しい。

｢えっお父さん？｣

｢そこまで言うのなら止めてやる。だが、俺に生意気な口を聞いたんだ。しっかり反省してもらわねば困る」

｢ちょっと！？ちょっ…Aを連れてどこ行くのよお父さん!!｣

声を荒らげる冬美姉さんを無視し、
玄関へ向かって歩んで行くクソ親父。

何する気なのコイツ。

相変わらず読めないその横顔を見上げていると、目前の引き戸が荒々しく開かれた。かと思えば浮遊感へ投げ出される。

どうやら外に放り出されたらしい。

咄嗟に着地し、何とか尻餅は免れた。

｢暫く帰ってくるな。不良品が｣

ピシャっ。

｢不良品ねぇ………｣

閉じられた引き戸を睨む。

本当に、どうしようもなく嫌な男だ。

まぁ冬美姉さんが傷つかなかったんだし、良しとしておこう。

スっと立ち上がり、青い空を見上げる。
今は7月か。入学まであと数ヶ月しかない。

｢そう言えば……｣

母さんのお腹に、赤ん坊がいるんだっけ。

最近辛そうにしてるのをよく見る。

確か1月には生まれるって言ってた。

｢…………………弟｣

紅葉に似た自身の柔い掌を見つめる。

君も、冬美姉さんや2人の兄さん達と一緒であってほしい。もし私と同じように、“氷結”と“熱”を使えてしまったら。

確実にあのクソ親父に目を付けられてしまう。

私と同じように、乱暴に扱われて抑圧されて。

初めて出来る…弟という存在の君には。

そうなって欲しくないから。

何でか分からないけど、そう思う。

早く君に会いたい。
って、思ってる私がいる。

……変な感じだけど嫌ではないね。