姉愛［04］｡山田花子｡ ページ4
｢やぁ轟少女！｣
………。目がイカれたようだ。
余りにも画風の違うムキムキ男の幻想が見える気がする。いつもテレビ画面か雑誌か新聞の遥か遠くに居る筈のその姿。
きっと見間違いだ。
取り敢えず。
｢人違いだよ｣
逃げよう。
｢待ってどうして逃げるんだい!!?｣
煩いこのおっさん。
暇で仕方ないので近くの公園まで散歩しようと思ってただけのに。
何でNo.1野郎に絡まれなくちゃいけないの。
｢轟A君だろう！？｣
｢誰それ。私は山田花子だけど｣
｢偽名らしい偽名だね!!
そんなんじゃ私は騙せないよ！｣
チっ。結構しつこいなこの人。
｢あからさまに嫌そうな顔しないで！
ちょっと話がしたいだけだからさ」
話………？
───。
オールマイトに仕方なく。
仕方なく着いて行き彼の行きつけだと言う喫茶店へやって来た。隠れ家的なお店のようで私達以外の客は1人もいない。
薄暗いし古臭いし。
ザっと店内を見渡し、思った。
｢怪しい店……｣
｢そうかい？ レトロで素敵な店だと思うけど｣
ふんっ知るか。
心中悪態をつき、終始笑顔の彼を見上げる。
｢さぁ座って座って｣
｢はぁ…………｣
何でこんな事に。
お気に入りの公園で捨て猫たちに癒されたかっただけなのに。
何が哀しくてこんなオっサンと。
｢さてA君｣
｢気安く名前を呼ぶな｣
｢じゃぁ轟少女｣
そこは素直なのか。
｢君の個性について聞きたいんだ｣
………個性について？
個性、個性…ねぇ。
｢氷結だけだよ｣
“熱”の方は口が裂けても言わない。
こんな、こんな汚い個性なんて。
唯の恥でしかない。憎い憎い赤。
この赤い髪だって、私は大っ嫌いなんだ。
｢……君の個性はそれだけじゃ無いはずだよ｣
煩い。煩い煩い煩い。
認めてたまるか。
クソ親父の個性なんて。
大体、貴方なんかに何が分かるって。
｢そんなに嫌いなのかい？ 熱｣
｢嫌いだよ。何よりも嫌いだ。
醜くて、汚くて、私の恥だ｣
無表情で。
とてつもない無の表情でそう言った。
すると何故か、悲しそうな顔をするオールマイト。意味が解らない。どうして貴方がそんな顔をするの。
貴方には関係の無いことじゃないか。
なのに、なのにどうして。
｢後もう一つだけ｣
｢……何｣
気持ち悪い。
ぐるぐるした、どろどろしたものに覆われている感じがする。心が息苦しい。
｢まだ“もう1つ”の個性は発現していないのかな」
………………。は？
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作者名：よる。 | 作成日時：2016年9月21日 16時
