姉愛［259］｡質感略奪｡ ページ9
出久side
──つい数分前。
｢……｣
無言の空間がとても重苦しい。
唯でさえ固く息苦しい僕の身体にそれがのしかかり、まとわり付いてくる。こんな状況でポジティヴにって言うのもそぐわないし絶対に間違っているけれどそれでも痛い。
痛いものは痛い。
いつも仲良しのお姉さんと轟くんが、喧嘩した。
それもかなり質の荒々しい喧嘩だった。
お姉さんも沈んではいる。
でも、一番辛そうなのは轟くん。
僕はそう感じた。悔やんでいるように見えた。最愛の人に怒鳴ってしまったことを。
轟くんの言い分には怖いくらいに納得できた。
僕も同じ事を思っていたから、正直に言ってしまうと、とてもスッキリした。お姉さんは何でも一人で抱え込む癖がまだ治っていない。
他人を信じる。
その心掛けをお姉さんは……。
｢麗日！？｣
｢え！？｣
伏せていた瞼がかっぴらいた。
｢障子ちゃん！ 皆…！ 轟先生っ｣
安堵の香る蛙吹さんの一声。
それと共に、麗日さんが｢あっ｣と拍子の声を漏らした。彼女の下から金の髪が抜け出したのが辛うじて見えた。
あれは、敵、か？
｢さっきの…｣
お姉さんが虚ろに小さく言った。
僕達と合流する前に鉢合っていたのだろうか。
｢わぁっAさんだー！ やっと生で見ることが出来ましたー！｣
異様にはしゃぐ金髪の女の子。
お姉さんにだけ限定して向ける瞳に、狂気を覚えた。左の轟くんがまた顔を歪める。
｢でも、殺されるのは嫌なので逃げますねぇ｣
｢ちょっと待っ｣
｢黒髪の人に自慢しておきます！ ハグしたって嘘も交えちゃいましょ｣
遠ざかる背を追おうとした麗日さんを、｢深追いは危険だわ。自分から去ってくれるのだから放っておきましょう｣と蛙吹さんが冷静に制した。
お姉さんはまだ、不透明に瞬きをしている。
｢麗日さん大丈夫！？ その怪我っ｣
｢大丈夫だよこれくらい！ それよりデクくんの方が…｣
｢っううん。僕は全然｣
｢って言える姿じゃないわよ｣
蛙吹さんにズバリと斬られた。
｢と、とにかく無事でよかったよ。僕ら今かっちゃんの護衛をしつつ施設に向かってるんだ。一緒に来てくれないかな…？｣
何とか腹を使って説明した。
すると何故か、麗日さんと蛙吹さんの二人の顔が疑問を帯びる。
｢その爆豪ちゃんはどこにいるの？｣
──え？
｢かっちゃんなら後ろに…｣
いないはずだった。
この非常時、誰も。
油断なんてしていない筈だった。
｢彼なら貰っちゃったよ。俺のマジックで｣
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みるくてぃ(プロフ) - 電車で完結まで見たのですが、涙が止まりませんでした。本当に大好きな作品です！また読み返そうと思います！ (2021年6月29日 12時) (
レス) id: 850a94406b (このIDを非表示/違反報告)
夏李 - とても面白かったです！でも爆豪のヒーロー名は爆心地かと、 (2019年5月10日 18時) (レス) id: 663d9c3cae (このIDを非表示/違反報告)
ふわふわわたあめ♪(プロフ) - 涙腺崩壊…ほんとにやばい、面白すぎ！完結おめでとうございます！ (2018年7月23日 17時) (レス) id: 770379ee24 (このIDを非表示/違反報告)
Sena - 完結おめでとうございます！感動しましたー！姉弟愛が凄くよかったです。 (2018年5月23日 15時) (レス) id: dfb791a807 (このIDを非表示/違反報告)
柊 - ありがとうございました!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! (2018年5月20日 16時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よる。 | 作成日時：2017年10月20日 19時
