姉愛［294］｡蒼鷺病院｡ ページ44
｢轟少年とは仲直りできたのかな？｣
───ん？
仲直りできたのかと訊くという事はつまり、私と焦凍が喧嘩をしてしまったことを知っているという事。どこから漏れたのか。
私の動揺ぶりを見て察したらしいオールマイトは優しく笑った。
幼児に向けるような雰囲気で。
｢轟少年もきっと仲直りしたいって思っているよ。私もいつも仲良しの二人が早く見たいなぁって思ってる｣
｢…謝ろうとはしてるんだけど、タイミングが｣
｢だよね。困るよね。君たちは今回初めて喧嘩したのだろうから仲直りの仕方とかもよく分からないんじゃない？｣
図星だ。立て続けに核心を突かれる。
姉弟喧嘩なんて私達にとって初めての体験だ。
それだけ怖かったし、未知だったし、新鮮だった。大切な弟に酷い態度を取ってあんな目を向けられるのは本当に辛いと思った。仲直りまでの、今のハッキリしない気持ちも。
仲直りしたその時の気持ちも。
私達は知らない。
｢轟少年なら、朝から病院に行っているみたいだよ｣
｢…そう。どこの病院？｣
｢剣楽君たちのお見舞いって言っていたらしいから｣
蒼鷺総合病院か。
｢ありがとう。オールマイト｣
踵を返した。オールマイトを横切り自宅を横切り全速力で駆ける。薫風に包まれて脚取りは自然と軽くなった。
もっともっと進める気がする。
｢行ってらっしゃい｣
そんなエールがまた力になる。
ただの姉弟喧嘩。ただの仲直り。
けれどそれは何物にも代えられない価値がある。
【俺は、君のおかげで感情を取り戻せた。君のお父さんのおかげで、俺は、君の弟のおかげで──】
だって、こうやって言ってくれる人がいる。
私の体力は底無し沼だ。いくら走り続けても尽きることは当分ない。すぐに白い大病院の頭が見えた。
ビルの間から蒼鷺の蒼と二分の一の鷺の字が私を見下ろしている。白と紺色で配色された病院の顔であるその文字。
なんだかムッとなって脚を早めた。
病棟が完全に視界に入ったところで、何かにぶつかった。
少しよろめくだけで尻餅をつくなんてことは無かった。
｢ぅおっ、すみませ｣
｢治嗣…？｣
｢ん？ あ。A！｣
何故か腕を広げた治嗣だったが、周囲の視線に気付くと病院の門の内側へ私を引っ張った。
車が二台並んでも通れるくらいに余裕のある、暖色で揃えられたインターロッキングを二人で歩む。車椅子のお爺ちゃんに会釈して私を見やる白衣姿の治嗣。
｢アイツらの見舞いか？｣
｢なんで知ってるの？｣
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みるくてぃ(プロフ) - 電車で完結まで見たのですが、涙が止まりませんでした。本当に大好きな作品です！また読み返そうと思います！ (2021年6月29日 12時) (
レス) id: 850a94406b (このIDを非表示/違反報告)
夏李 - とても面白かったです！でも爆豪のヒーロー名は爆心地かと、 (2019年5月10日 18時) (レス) id: 663d9c3cae (このIDを非表示/違反報告)
ふわふわわたあめ♪(プロフ) - 涙腺崩壊…ほんとにやばい、面白すぎ！完結おめでとうございます！ (2018年7月23日 17時) (レス) id: 770379ee24 (このIDを非表示/違反報告)
Sena - 完結おめでとうございます！感動しましたー！姉弟愛が凄くよかったです。 (2018年5月23日 15時) (レス) id: dfb791a807 (このIDを非表示/違反報告)
柊 - ありがとうございました!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! (2018年5月20日 16時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よる。 | 作成日時：2017年10月20日 19時
