姉愛［283］｡終焉真冬｡ ページ33
＊＊＊
颯輔と一歌が18を迎えた晩冬。
ともに美大生を謳歌していた二人は、昔と変わらず仲が良かった。恋人同士ではないのが不思議なほど颯輔と一歌を結ぶ糸は暖かかった。
今もこうして並んで歩いている。
一歌の腕の中にはぱんぱんに膨れた紙袋があった。
収まりきらずはみ出した立派なフランスパン。
歩道ですれ違う人々からは何やら妙な目を向けられた。
｢や、やっぱり買いすぎたかなぁ…｣
不安と寒さから背中を丸めた一歌。
｢大丈夫だよいっちゃん。明日はいっちゃんの誕生日なんだしこれくらいして当然だよ、ね？｣
微笑む颯輔の両手にも丸く太ったスーパーのビニール袋がぶら下がっていた。
｢そっか、そうだよね！ ありがとう颯ちゃん！｣
｢いえいえ〜。俺の時すっごいサプライズして貰ったしそのお返しってことでっ｣
一歌の頬が赤くなった。
そのサプライズと言うのは一歌にとって相当の暗黒の歴史として残っているらしい。自分で計画して自分で実行したそれだったが、一歌は今でも後悔せずにはいられない。
｢いやぁーあの時の一ちゃん可愛かったなー、まさかメイド服で猫耳つけて颯ちゃんおめでとうって笑ってくれるなんて思ってもみなかっ｣
｢わーー!! 颯ちゃんシャラップっ！｣
｢プッいっちゃん顔真っ赤｣
りんごみたい。と中学生っぽく笑う。
一歌は颯輔の親友に言われた。
｢颯輔メイド好きだからさ、メイド服着てサプライズしてあげればどう？ あっ猫耳も大好きらしいし！｣と。
親友は遊び半分だったが一歌は真っ直ぐに受け止めてしまった。
結果、颯輔は大喜びだったが一歌としてはたまったもんじゃない。
｢そもそもあれは颯ちゃんのお友達さんに！｣
｢あー可愛かったなぁまた見たいなぁ｣
｢だからもういいってば！｣
これでも恋人同士ではないのだ。
｢喉渇かね？｣
｢喉乾いたね｣
ほぼ同時で発した。顔を見合わせる。ぷっと吹き出して瞬間また芽生えた愛おしさを胸に落とした。
少しだけ見つめ合って、颯輔が言う。
｢俺、自販機でなんか買ってくるよ。いっちゃんは休憩も兼ねてあそこのベンチにでも座ってて｣
｢ありがとう。お金あとで返すから｣
｢いいよいいよ俺の奢りー！｣
脇目も振らず走って行った颯輔。
慌てて引き留めようと手を伸ばした一歌だったが、その手は冷気に晒されるだけで終わった。
｢わ、私だってたまには払いたいのに…｣
むぅ、と頬を膨らませた。
頭上から、黒い影がおりてきた。
｢え──｣
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みるくてぃ(プロフ) - 電車で完結まで見たのですが、涙が止まりませんでした。本当に大好きな作品です！また読み返そうと思います！ (2021年6月29日 12時) (
レス) id: 850a94406b (このIDを非表示/違反報告)
夏李 - とても面白かったです！でも爆豪のヒーロー名は爆心地かと、 (2019年5月10日 18時) (レス) id: 663d9c3cae (このIDを非表示/違反報告)
ふわふわわたあめ♪(プロフ) - 涙腺崩壊…ほんとにやばい、面白すぎ！完結おめでとうございます！ (2018年7月23日 17時) (レス) id: 770379ee24 (このIDを非表示/違反報告)
Sena - 完結おめでとうございます！感動しましたー！姉弟愛が凄くよかったです。 (2018年5月23日 15時) (レス) id: dfb791a807 (このIDを非表示/違反報告)
柊 - ありがとうございました!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! (2018年5月20日 16時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よる。 | 作成日時：2017年10月20日 19時
