姉愛［282］｡天照一歌｡ ページ32
＊＊＊
小学三年生の夏。
颯輔と一歌はすっかり大の仲良しになっていた。
学校でも二人でいることが殆どで、男子に冷やかされるもそれをコミカルに返して見せる颯輔はやはり強かった。
｢いっちゃん見て！ これ！ お昼からあんの！｣
｢え？ なになにー？ んー、紙芝居？｣
｢うん！ たまぁにやってるんだよ！ 学校のすぐ横にある公園でさ、優しいおっちゃんが読んでくれんの。しかも終わった後に飴とかジュースとか配ってくれるんだよ！｣
はにかむ颯輔に一歌は苦笑い。
ちゃっかりしてるなぁ…と思った。
｢私は大丈夫だけど…颯ちゃん暑いの苦手だよね｣
｢ん？ うん｣
｢今日、気温30度近くになるってお天気のお姉さんが言ってたよ｣
心配そうに眉を下げる一歌に颯輔は｢大丈夫大丈夫！ 帽子かぶってくから！｣なんて向日葵みたいに笑う。
一歌はハっと悟った。
これもう止まらないやつだ。
｢じゃあ早速行こう！｣
｢へっ！？ ちょっと！？｣
文庫本を手にしていた一歌の腕を無理に引っ張って家を飛び出した。涼やかなクーラーの風が、その場に置き去りにされたそれを、少し揺らした。
結局、颯輔は熱中症になった。
顔は赤く沸騰し息は荒く目の焦点はグラグラ。
｢そ、颯ちゃん大丈夫…？｣
｢ウッだ、いじょぶぷっぅ!!｣
｢わあぁぁ!!? 颯ちゃぁん！？｣
最悪なことに一歌の目の前で吐いた。
｢うっぉええええええ｣
｢颯ちゃん朝どれだけ食べたの！？｣
｢は、白米を5杯ほど…｣
｢食べ過ぎだよ!!｣
止まらない嘔吐に思わず突っ込む一歌。
この時、颯輔は心底から思っていた。
俺カッコ悪すぎる。何で好きな子の前でゲロ吐いてんだろ。あー嫌われたかも。死ぬ。
それから今朝の自分の暴食ぶりを存分に悔いた。
｢こんな時…時間を戻す個性でもあれば…｣
まだ生温い頭で考えついたのはそんな事。
自分の肩を支えてくれるか弱い女の子を見やった。颯輔はふっと、火照った頬を緩ませた。
｢俺、やっぱりいっちゃんを守れる個性がいいや｣
｢……？ 何か言った颯ちゃん？｣
｢ううん。なーんでもなーい｣
自身の個性を知らないからこそこんな発言が出来た。自身に眠るその個性の実態を知っていたなら、こんなにも綺麗な微笑みではいられなかっただろう。
果てしなく残酷な颯輔の力。
それは、颯輔自身を壊す力。
｢いっちゃん、俺達ずっと一緒だよ！｣
｢──！ …うんっ｣
｢ウッ大声出したら…ぅおろろろろ｣
｢きゃぁあ颯ちゃんー！？｣
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みるくてぃ(プロフ) - 電車で完結まで見たのですが、涙が止まりませんでした。本当に大好きな作品です！また読み返そうと思います！ (2021年6月29日 12時) (
レス) id: 850a94406b (このIDを非表示/違反報告)
夏李 - とても面白かったです！でも爆豪のヒーロー名は爆心地かと、 (2019年5月10日 18時) (レス) id: 663d9c3cae (このIDを非表示/違反報告)
ふわふわわたあめ♪(プロフ) - 涙腺崩壊…ほんとにやばい、面白すぎ！完結おめでとうございます！ (2018年7月23日 17時) (レス) id: 770379ee24 (このIDを非表示/違反報告)
Sena - 完結おめでとうございます！感動しましたー！姉弟愛が凄くよかったです。 (2018年5月23日 15時) (レス) id: dfb791a807 (このIDを非表示/違反報告)
柊 - ありがとうございました!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! (2018年5月20日 16時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よる。 | 作成日時：2017年10月20日 19時
