姉愛［278］｡颯輔さん｡ ページ28
no-side
｢そこの車止まりなさい！｣
二弦とSATの長が揉めていたところに、驚きの滲んだ怒号と荒々しいエンジン音が割き入ってきた。全員の鼓膜が揺れる。
聞き耳なんて持たない。
そう言うかのように瓦礫の山を飛び越え、車体はアクティブに着地した。
キキ…と蠢く闇の真ん前に停車。
｢あの車……｣
殆どの人間が首を傾げる。
その中で二弦だけが、知っていた。
あれが誰の愛車なのか。どうしてこんな危険な場所に突入して来たのか。どうして闇に近付いているのか。
｢やっと、来て…くれ｣
二弦だけがわかった。
茶髪が、顔を出した。
｢どうも皆さんお揃いで｣
柔らかく微笑むその姿はどう見ても現状とはそぐわないそれで。彼の同僚や部下が多くいる警察はもちろん、皆が目を丸くした。
少し遅れて駆けつけた塚内に至っては、
｢颯輔さん…｣
感極まってもう、涙ぐんでいた。
｢こりゃ大分荒れてるねぇ｣
周囲を軽く見渡し眉を下げる颯輔。
攻撃対象である闇のすぐ前に彼が立ち塞がったせいで、戦車は固まりいくつもの銃口は地面へ落とされた。
颯輔は思惑通りにいったと瞼を下ろす。
すぐに開くと、スラリと長い右脚を一歩前に出しめいっぱい空気を吸い込んだ。
｢この子は俺が助けます｣
強い眼差しが右眼に宿り、燃えた。
二弦は音もなく涙を流している。
｢…にっちゃん。ごめんね｣
｢っ、なんで…｣
｢俺はA嬢を救けるから、またにっちゃんとはお別れになっちゃうから。謝っておきたかった｣
｢どうして！？ 僕が颯輔さんを救けるよ!!｣
激変した二弦の弱々しい態度と口調にグラントリノは困惑した。傾く二弦の身体。
うずくまり、泣きじゃくる。
以前のように泣きじゃくる。
｢僕がっ、あの時勝手に死んで貴方を置いていった！ 貴方を独りぼっちにした…！ だから今度はって！ 一緒に助かりたくてっ｣
その姿はまるで、生前の“二乃宮颯輔”のよう。
｢……俺みたいになっちゃってるよ。にっちゃん｣
言って悲しげに微笑む。
今にも消えてしまいそう。
それくらい不透明に映った。
｢じゃあね。ばいばい｣
｢待ッ、颯輔さ｣
車を捨て、あろうことか闇の渦の中に走って行く。
何の躊躇もなく向かって行く。
｢やめろ西宮!!｣
｢颯輔さぁん…!!!｣
｢颯輔さん!!｣
仲が良かった上司の雪村さんの声。
にっちゃんのがらがらの泣き声。
直くんの必死なその声。
｢ごめんね｣
ポトン──。
颯輔の茶髪は漆黒へ消えた。
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みるくてぃ(プロフ) - 電車で完結まで見たのですが、涙が止まりませんでした。本当に大好きな作品です！また読み返そうと思います！ (2021年6月29日 12時) (
レス) id: 850a94406b (このIDを非表示/違反報告)
夏李 - とても面白かったです！でも爆豪のヒーロー名は爆心地かと、 (2019年5月10日 18時) (レス) id: 663d9c3cae (このIDを非表示/違反報告)
ふわふわわたあめ♪(プロフ) - 涙腺崩壊…ほんとにやばい、面白すぎ！完結おめでとうございます！ (2018年7月23日 17時) (レス) id: 770379ee24 (このIDを非表示/違反報告)
Sena - 完結おめでとうございます！感動しましたー！姉弟愛が凄くよかったです。 (2018年5月23日 15時) (レス) id: dfb791a807 (このIDを非表示/違反報告)
柊 - ありがとうございました!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! (2018年5月20日 16時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よる。 | 作成日時：2017年10月20日 19時
