姉愛［267］｡数千本の｡ ページ17
no-side
淀む夜空に1つの小さな影が舞っていた。
巳沸騰亜、もとい成瀬二弦だ。彼の白い手には生温く湿った手紙が握られている。同じく湿った目元をぶら下げて、ビルからビルへ飛び移る。
いつもなら無駄の無い足運びが、今は辿々しい。
｢1人で死ぬ気かあの人は｣
かなり切羽詰まった顔で言う。
が、自分の発言にハっと唇をすぼめた。
そう言えば自分もそうやって絶ったのだった。
勝手に、颯輔さんを残して。
死んだんだ。
｢…っ｣
思い出したくもない。
手紙をクシャっと潰す。
颯輔の年季の入った文字が顔を出した。
ごめんねにっちゃん。
今度は遂げられそうなの。
寂しいけど、ばいばい。
｢いかせてたまるか！｣
鼓舞するように三日月へと叫ぶ。
青白さが混じった翡翠の瞳を、一部だけポッカリ崩壊した小ぶりな建物へ落とした。
立ち上る煙が、二弦の黒髪をかすめる。
散りゆく煙の中に、辛うじて見えた。
｢もう逃がさんぞ敵連合…｣
平和の象徴に相応しい大きな背中と。
安堵したくなる親しい古豪の背中。
｢我々が来た!!｣
｢……｣
向かいのビルの縁に着地して、それを凝視する。
眼下に満遍なく集結している警察。プロヒーローの面々、その中でも目立つのは炎を纏うエンデヴァー。
｢…騰亜が見たら飛び跳ねるんだろうな｣
場に似合わない綻びは一瞬で消した。
タンっと身軽に跳ね、晴れてきた煙の中に飛び込む。
当然、突然過ぎる少年の登場には多くの目が刺さった。古豪はパっと目を見開く。
｢──騰亜！？ 何でここに!!｣
叱りつける直前の目で二弦を見上げるグラントリノ。
｢だ、誰だ？｣
｢君は…巳沸くん？｣
シンリンカムイに続き、オールマイトが言う。
｢お前まさか……｣
｢ごめんグラントリノ。つけて来た｣
｢大人しく留守番してろって｣
｢言われた。けど無理だった｣
また手紙に深く指を沈める。
震える二弦の両肩が容易に確認できた。
｢コイツらを止めないと、全部消える。アンタの大切な人も、俺の大切な人も｣
アンタ、と言い見たのはグラントリノとオールマイトの2人。
｢失いたくないのは皆同じだろ、だから｣
｢嫌いなんだよお前らだから…本当にムカつく｣
そんな低声が、床を伝う。
｢大切…守る…失いたくない、だ？ 奪っておいて自分の物には特別手を巡らせて死守して血眼になりやがって｣
死柄木の瞳が数千本の棘を帯びた。
｢大っ嫌いだお前ら!! お前がっ…！｣
逆立つ。
｢お前が、嫌いだ!!!｣
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みるくてぃ(プロフ) - 電車で完結まで見たのですが、涙が止まりませんでした。本当に大好きな作品です！また読み返そうと思います！ (2021年6月29日 12時) (
レス) id: 850a94406b (このIDを非表示/違反報告)
夏李 - とても面白かったです！でも爆豪のヒーロー名は爆心地かと、 (2019年5月10日 18時) (レス) id: 663d9c3cae (このIDを非表示/違反報告)
ふわふわわたあめ♪(プロフ) - 涙腺崩壊…ほんとにやばい、面白すぎ！完結おめでとうございます！ (2018年7月23日 17時) (レス) id: 770379ee24 (このIDを非表示/違反報告)
Sena - 完結おめでとうございます！感動しましたー！姉弟愛が凄くよかったです。 (2018年5月23日 15時) (レス) id: dfb791a807 (このIDを非表示/違反報告)
柊 - ありがとうございました!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! (2018年5月20日 16時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よる。 | 作成日時：2017年10月20日 19時
