毒舌スーパーアイドルは朝日奈になりました2 (ページ27)

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第76話『正しい道へ』ページ27

要side

心配していた他の兄弟達もAちゃんがきちんと帰ってきたことに安堵して皆がAちゃんに話し掛けていた時、事件は起こった。

雅「戻って来てくれて良かったよ」

貴「はい、すみませんでした…」

右「きちんと戻って来たのですし、あまりクドクドと言うこともないのですが――」

光「京兄、もう充分クドクド言ってるって」

祈「でも本当に戻って来てくれて良かった」

弥「おねーちゃん、大丈夫だった？」

侑「すっげー皆で探したんだからな！」

琉「どうどう」

昴「琉生兄、馬じゃないんだから」

琉「…でも、皆、心配、したのは、本当」

貴「ごめんなさい。特に琉生さんには何とお詫びしていいのか……」

琉「大丈夫。家族、なんだから、ね？」

貴「えっ……？」

琉「えっ？」

何気ないるーちゃんの言葉にAちゃんは言葉を詰まらせた。その時、光から俺に目配せが来たということは……もしかするとそういうことなのかもしれない。

要「ねぇAちゃん。Aちゃんは今夢を見てるの？」

俺の言葉を聞いてからそのまま静かに1分か2分が過ぎた時漸くAちゃんは意味を理解したように目を見開いて瞬きを繰り返した。

貴「わた、し……。そっか、かりんは、もう……」

両掌を見つめながら絶望したように言葉を零したAちゃんに他の皆も何かしら察したみたいだった。

それを見て俺は光に目配せする。

光はそれを承けてAちゃんを連れて一度部屋を出ていった。

Aちゃんは……まだ不安定なんだね。

それを気づくことが出来なかった俺自身にも悔しさが募ったけれど後は弟二人に任せる他はない。

心の中で小さく応援を送った。

光side

Aはすすり泣くようにしながら俺の腕に引っ付いているが以前その顔にあった明るさは今や絶望によって覆い隠されていた。

光「A、落ち着いた？」

こういう相手と話すことも慣れていると自負しているけど実際に身近な人間がこうなるとちょっと胸にクるものがある。

要や他の兄弟から見たら今のAは少し前の祈織と通づるところがあるのやもしれないが。

貴「ひか、る……」

まだ、そうやって呼んでくれるんだ…。

貴「わたし……まだ全然……」

その先は聞かなくても分かるよ。
Aがどれだけ大切にしていたのかもたった数年でどうにか出来るほどの容易さではないことも。

貴「あのねっ……」

そう続けようとしたAに中庭の方に視線を向けさせればすぐに駆け出して行った。