何時迄、 ページ3
「あの日」。鶴丸は自身の主に全く同じ質問をした。
「いつまでも」と返してくれることを望んで。
永遠の愛を誓ってくれることを望んで。
しかし、帰って来たのは沈黙だった。
彼女の気持ちを疑ったりはしなかった。
必要以上に気落ちすることもなかった。
「だって、そうだろう？これはただの幼稚な言葉遊びだ。その一言一言に一喜一憂する方がおかしいじゃあないか。」
それならどうしてあのとき自分は上手く笑えなかったのだろう。
浮かんだ疑問を無視して、鶴丸はへらりと笑った。
少し顔が強張っている担当は、その笑顔から目を逸らした。
(一体どうしたっていうんだろう。上手く笑えているはずなのに、)
息が、少し詰まる。
「君はすごいな！いつだって、ちゃんと、全部に答えてくれた主が、唯一応えられなかった問題に、一日足らずで答えに辿り着いてしまった。」
「それでも、貴方の欲しい答えではないでしょう、」
「答えなんてどうだっていいと思っていたんだぜ？それが君の決めたことなら、後悔がないなら、なんだっていい。」
後悔、と担当の唇がその言の葉を紡ぐ。
そして酷く自傷的に笑った、ように見えた。
実際にはその表情は笑顔とはかけ離れていたし、口元が緩んだわけでもなかった。
でも何故か、そう感じた。
「後悔を、しない人などいるのでしょうか。」
だってそうでしょう？
首を少し傾げて彼女は続ける。
そう。彼女はもう何度も見てきた。
後悔はしない。そう言って、望まぬ結末に向かっていく者たちを。
彼女もまた、その一人だった。
否、後悔すると理解しながらも間違いを選んだ。
「…いないさ、きっと。」
だからせめて、好きな選択肢を選べばいい。
酷く眩しい笑顔。
その正しさと、優しさが、心を抉っていくのだろう。
「君は誰かを好きになったことを後悔するのかい？」
「ええ、致します。」
「じゃあ、誰かの為に命を投げ出す俺を馬鹿だと思うかい？」
「…もう、昼餉の時間です。お戯れはここまでに、」
「答えてくれ。」
立ち上がろうと、少し腰を浮かせた担当の左手に少し触れる。
何故だろう。触れるだけのそれを、担当は振り払えずにいた。
無に近い表情。虚ろな目は、鶴丸を捉えない。
「お手を、退けてください。」
意識不明の恋人は、いつまで私を想っていてくれるでしょうか。
彼が「いつまでも」と言うのなら、そうなのでしょう。
でも、私は？
私はいつまで純粋な愛を貴方に向けていられるかな
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作者名：伊織（神様卒業） | 作成日時：2018年5月3日 23時
