答え合せ ページ1
「さあ、答え合せといこうじゃないか。」
朝食が終わった途端に、まだ片付けも終わっていないというのに鶴丸は担当の手を引いて自室に連れて行った。
「君の部屋でもいいんだがなぁ、また待たされてもかなわん。俺の部屋で我慢してくれ。」
余程「答え合せ」が楽しみらしい。
「その様子だと、答えは決まったようですね。」
「君も決まっているんだろう？」
かく言う担当も、答えを聞くのを内心楽しみにしていたのだろう。
鶴丸の手を振りほどかなかったのは、そういうことだ。
「君が出したあの残酷な問題。あれはとても悩んだ。」
「ええ、そうでしょうね。」
鶴丸の性格からして、悩むのは当然だろう。
どちらも大切ならば、どちらかを見捨てるなんてことはできないだろう。
だからこそ、聞いたのだ。
優しすぎること男が、一体何を選択するのか。
「俺は刀剣だ。人の形を宿しているだけで、人じゃあない。死んだとしても、俺は還るだけで、二度と会えないわけじゃない。」
「それでも、再び会える貴方は、貴方であって、貴方でない。」
「ああ、そうだ。だが、その大切な人、とやらは、二度と会えるか分からない。」
では、どうする気ですか。
そう問うた担当の声は少し固かった。
「二人共を、助けるさ。」
担当が、黙りこくる。
「最初に言っておこう。俺は決して、お人好しな訳ではない。自分の命を蔑ろにしている訳ではない。その上で、この結末を選んだ。」
真剣な表情で鶴丸はそう宣言する。
ただの大昔に流行った問題だというのに、何故そんなにも真剣に考えているのだと、もしも周りに何も知らない誰かいたのなら間違いなくそう思っていただろう。
「迷うさ、きっと迷う。迷いなくこれを選ぶことは絶対にできない。でもきっと、俺は海に飛び込むだろう。」
「一体、何故、」
「生きて欲しいんだ。彼女に生きて欲しい。」
彼女、と呟く担当。
鶴丸は、溺れている人を「彼女」と重ねたらしい。
「俺が命を落としたとしても、彼女は悲しまないかもしれない。直ぐに俺という男を忘れてしまうかもしれない。でも、俺が一番怖いのは、忘れられることよりも、彼女がいなくなってしまうことだ。」
「貴方は、まだ審神者様がお好きなのですか、」
「ああ、好きだな。この気持ちはいつまで経っても変わる気配がない。」
酷く、悲しそうな顔をした。
悲しくて堪らない。そう言いたげな顔だった。
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作者名：伊織（神様卒業） | 作成日時：2018年5月3日 23時
