その少女、否定 ページ43
「毒っていうのは、ずっと匂いが残るものもある。……多分、グレイが飲まされたやつもその類だな」
……私が飲まされる毒っていうのは、致死性はないけど。吐き気や下痢、目眩や頭痛などが続く系の毒。
それで数日苦しんでから、微量の解毒剤を渡される。
ちょうど、この学園にくる二日前に解毒剤を飲んだところだったのだ。
「俺も、毒には慣れてるからさ。匂いで分かるんだよなぁ」
『……匂い、で。……でも、毒は……醜い人は、皆飲んでるって……義母さまが』
けらけらと、何でもなさそうにカリムさんは笑うが。
匂いで分かるようになるまで、どれくらいの量の毒を飲んだのだろう。
カリムさんは、どうしてそれを笑って話せるのだろう。
「……グレイ、良いか?普通のお母さまは、自分の子どもに毒なんて飲ませない。……グレイの家族は、ちょっとおかしいんだ」
『……おか、しい……?』
誰が?……私の家族が?
じゃあ、今まで私がされてきたことって何?
分からない。分からない分からない分からない分からない。
私の家族はおかしくなんて、ない。もちろん私も。
『……私の家族、は……おかしくなんて、ない!変なこと言わないでくださいっ』
「!……まぁ、最初はそうなるよなぁ」
私がカリムさんを睨むと、カリムさんは苦笑してそう呟いた。
それから少し考えるように「うーん」と言って。
「……うん、少しずつ変えていけば良いよな。……ごめんな、グレイ」
『……いえ。私も、叫んでしまって……ごめんなさい』
カリムさんが私に謝る。
私が首を振って頭を下げると、カリムさんは優しい声で「グレイは悪くない」と言った。
そこで授業終わりの鐘が鳴り、バルガスさんの「降りてこい」の声。
カリムさんは上手く箒を操って、綺麗に着地した。
「じゃあな、グレイ!」
『……ありがとう、ございました』
片手を力いっぱい振るカリムさんに頭を下げる。
一番高く飛んだ私たちには、体力育成の加点があるらしい。
周りの人たちが色々言っていたけど。私はそれを気にする間もなかった。
その時も、次の授業も。一日中ずっと。
……どうしてかは、分からないが。
その日は一日中、カリムさんに言われたことがずっと頭を回っていた。
ー ー ー ー ー ー ー ー ー
洗脳されている子って、最初はその事実を突きつけられても否定するんじゃないかなと。
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推しが尊い - 先生まじで優しすぎて泣く。好感度がバク上がりした (4月27日 0時) (レス) @page46 id: 653187292b (このIDを非表示/違反報告)
Akal(プロフ) - まだ途中までしか読んでないけど…マジで夢主ちゃんとキャラ達和解してほしい…!義家族許せないわ、これは。夢主ちゃん大体悪くないのに… (2023年3月29日 16時) (レス) @page25 id: 5bb5794148 (このIDを非表示/違反報告)
森。(プロフ) - 何度も読み返したくなり戻って来ました!何度読んでも涙が出てきて…これ程までハマった作品は初めてです!完結おめでとうございます! (2022年11月2日 7時) (レス) @page1 id: 21990a494b (このIDを非表示/違反報告)
ロナ - イラつきます。 (2021年10月30日 13時) (レス) @page37 id: db59ef0184 (このIDを非表示/違反報告)
こうめ - えっ、小説で初めてガチ泣きしたんだが?!!好きです!! (2021年4月14日 0時) (レス) id: cfffb34543 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:チーズ鍋 | 作成日時:2020年9月18日 16時