un cuoco curioso⑯ (ページ11)

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【高等部２年】676 ページ11

本選が始まるまでまだ時間に余裕があり急ぐ事無くAと葉山は観覧席に向かい扉を開けるとそこには薊と真凪とえりなが待っていた。

え「よかった、Aもこっちに来てくれたのね。」
『流石に全員揃ってるなら来るよ。』
葉「こっちに義父さん達がいるけどって聞いたら即答だったしな。」
薊「連れてきてくれてありがとう。さぁ、もうすぐ始まるよ。」
真「アキラはどうする？このまま見ていくか？」
葉「いや、俺はまだ運営の仕事があるんで。」

10年以上経って漸く家族水入らずで選抜を見るなら邪魔をしないでおこうと葉山は仕事があるのは事実のため少し顔を合わせた後部屋を後にした。

『さて…一回戦は私の生徒かぁ。』
え「お題は麺料理…得意分野は？」
『スペイン料理。もう一人、三回戦の方はイタリアン。』
薊「Aとアキラくんの講義を受けてるなら香りを重点に置く料理になりそうだね。」
真「しかしA達よりは劣るであろうが、この審査員程度なら問題なかろう。」
『…やっぱお母さんのそういう所、えりなと同じだね。』
え「なっ!!私は審査員の方々をそんな風に言わないわよ！」
薊「真凪とえりなは根本的な性格が似てるからね…。」
『…母娘揃って高飛車な女王様。』

真凪の物言いからやはりえりなは真凪に似てると言いながら定刻となりステージに明かりが付いたのを見て一旦会話を止めステージを見下ろす。

「長らくお待たせ致しました。只今より…秋の本選、一回戦第一試合を開始致します!!」

司会のアナウンスで審査員が座ると第一試合の生徒も入場し客席が大きく盛り上がると上階にいるにも関わらずA達の所まで歓声が届く。

『…下にいなくてよかった。』
え「そうね…Aは煩くて適わないでしょうね。」
『うん。…へぇ、意外だなぁ。いつも大人しいのに今日は好戦的だ。』
薊「何せ秋の選抜だからね、普段大人しい生徒も高ぶっているのだろう。」

試合が開始されると双方緊張感を感じつつも調理し、その間A達は調理工程や他愛もない話をしながら１時間が過ぎると仙左衛門達の審査が行われ勝者はAの生徒だった。

薊「葛切りを使うなんて面白いね。」
『しかもフディオをベースにしてる、炊き上げで使う出汁をスープ用にしたんだね。』
真「しかも甲殻類の旨味は余すことなく使っておるからとてつもなく強い旨味に加え葛切りののど越しの良さでかっ食らっておったな。」
え「…なんだか、去年の黒木場くんのラーメンに似ているわね。」