恋風乱舞【ars M.A】 (ページ23)

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23.ヘンナ・ムシ。ページ23

ニノちゃんが居なくなって、また一人になる。

一応、ニノちゃんにバイバーイって手を振ったら呆れたような顔で振り返り「はいはい」って手でシッシってされた。

「彼氏だったら堂々と...」

掛けてた眼鏡を外して、Tシャツの胸元に挿す。
キャップは...頭ペッタンコだから脱げないか。

中途半端に変装を取ったちょっとだけ堂々とした姿でもう一度、赤団を見た。

「...ん？」

目をゴシゴシして、二度見。

「んん？」

Aちゃんの隣に、男の子。

あれってあの子だ。たっ君。

たっ君が楽しそうに笑いながら話し掛けて、Aちゃんもつられるように笑ってる。

その瞬間、たっ君が彼女の肩に触れた。

こらぁ！俺のだぞ！？
俺のAちゃんに気安く触るなー！！

何だよ、そんなイケメン笑顔をAちゃんに見せるなってば！
いや、そんなのにAちゃんは惑わされないと思うけど！
ってゆーか、俺だってそこそこイケメン笑顔だと思うけど！

「相葉先輩？」

俺がムゥゥってなってると、突然声を掛けられた。

「何してんッスか？」
「あ！山田くんだー。格好良いね！」

素肌に学ランで、赤いたすき掛けをした応援団スタイルの山田くんが、エヘヘって笑って俺の隣に体育座り。

「応援団してたらもう、喉渇いちゃってー」

そう言えば去年団長だった翔ちゃん、途中で喉ガラガラになって最後には凄い声だったな。

「大坂、見に来たんですか？」
「あ！内緒だよ！？ホントは来るなって言われたから...」
「フフッ、分かりました。でも大坂、喜ぶと思いますよー？先輩来てるって分かったら」
「そっかなぁ...」

チラ、っとAちゃんを見る...と、まだたっ君と喋ってる。

「ねぇ、山田くん。あの子って...」
「え？あぁ、大倉ですか？」
「大倉？たっ君じゃなくて？」
「あー、たっ君でもあって大倉でもあります」

ふーん、と言うと山田くんがお尻をジリジリこっちに寄せてちょっと近付いて来た。

「春からの転入生なんです。親の都合で引っ越して来たらしくって」
「へぇ...」
「『大坂』と『大倉』だから出席番号前後なんですよねー。だから席も前後で...」
「えっ！？それでそれで！？」
「俺、大坂に変な虫が付かないように見張れってトモに言われてたんですけど...いかんせん俺、出席番号最後だから席めっちゃ遠くて...」

暑いー、って学ランをパタパタさせながら山田くんがAちゃんとたっ君の方を見たんだけど

何か、俺ちょっとそっち見れない。