恋風乱舞【ars M.A】 (ページ12)

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12.チョウゼツ・イケメン。ページ12

「彼女、どんな子なの？」
「えっとー、ドーナツが好きでー、桃の匂いがしてー、可愛いです。フフッ、可愛いんです」
「......うん。甘い感じだって事は分かった」

お客さんが来るまで、斗真さんと世間話をして過ごす。

一応、何か仕事しなきゃと思ってグラスを布巾で拭きつつ

「ねぇねぇ！斗真さんって、モテモテでしょ！」

って訊いたら

「雅紀くんと違って、俺はもうおっさんだからなー」

なんて言うけど、俺からしたら斗真さんの大人な雰囲気がめっちゃ羨ましいのに。

「あ、雅紀くん。今度、彼女連れておいでよ」
「...えっ...？」
「もちろん、ご馳走するし」
「あー...ハハッ、えっとー...」
「ん？どした？」

拭いてたグラスを置いて、斗真さんを見ると

斗真さんもこっちを見てた。

「相談...ってゆーか...相談、うん、相談なんですけど...」
「相談？うん、どしたの」
「俺、彼女に嘘ついちゃって...」
「嘘？どんな？ヤバいやつ？」

俺は斗真さんに、バイト先をバーじゃなくて居酒屋だって言っちゃった事を話した。

斗真さんは「あらー」って困ったように笑って、頭をポリポリと掻いてる。

「そんな危ない店じゃ無いんだけどな、うち」
「あーっ！それは！分かってます！この店はちょー良い店なんっス！ただ...『バー』ってゆーイメージが...」
「まぁ、若い子にはちょっと大人の雰囲気だと思われるかもな」
「彼女、まだ高校生だし...」
「女子高生！？」

いーなー！女子高生！って、何かテンション上がった斗真さんが「あ、こーゆートコがおっさんなんだわ...」って一人でガックリした。

「正直に言うべきですよねぇ...」
「まぁ、雅紀くんが悩んでるなら早めに言う方が良いかもね」
「ですよねー...」
「うちに連れて来れば変な店じゃ無いのも分かって貰えるんだし」

背中を斗真さんに軽く叩かれる。

お兄ちゃんが居たらこんな感じなのかなーなんて思ってたら、店のドアが開いた。

「あ、いらっしゃいませ！」

急いでお客さんが開けてるドアを内側からお手伝いする。
ここのドア、ちょっと重いから。

扉が開いたと同時に「斗真ー」って声。

「おぅ！」

カウンターの中で斗真さんも、軽く手を挙げる。

友達なのかな？って思ってると、お客さんが俺を見て「あ、ドア開けてくれてありがと」って言った瞬間

「あれ...？君...」
「あ」

多分、お互いの動きが止まった。

「ん？どーした、潤」

斗真さんが、俺の目の前の超絶イケメンに声を掛けた。