初桜、折しも今日は良き日なり【ars】 (ページ9)

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8.勧善懲悪。ページ9

四人になった俺たちは、鬼ヶ島目指して突き進む。

何故か先頭は雅紀で、その後ろをニノが歩いて、俺と潤は横に並んでその後ろを歩く。

「相葉くんが先頭って事は、相葉くんが鬼ヶ島の場所知ってるの？」
「絶対知らない」
「じゃあ、ニノが知ってるの？」
「アイツも知らない」
「え？まさか翔さんも...」
「うん、知らない」

えぇーっ！？って大声で驚くと、潤は懐をゴソゴソして中からスマホを取り出した。

「そーゆー事は事前にちゃんと調べるべき！」

そう言うと、掌の中の端末をササッと使って「なるほど...地図地図...」って独り言を零してる。

立ち止まって調べ物に集中してる潤と、それを眺めてる俺に気付いた前を歩いてた二人も走って集合して来た。

「あっ！凄ーい、潤くんスマホ持ってたんだ」
「ニンゲンみてぇだな、Ｊ」
「Ｊ？何、それニノ」
「ん？コイツ、何かスタイリッシュだからＪ」

じゃあ、俺の事もＭって呼んで！って言う雅紀を軽く無視したニノが潤の手元を覗き込む。

「Ｊ、どう？鬼ヶ島の場所、目星ついた？」
「んー...まぁ大体分かったよ！ここを真っ直ぐ行ってー...」

潤とニノが居たら、きっと鬼ヶ島までは問題無く行けそうだ。

「ねぇ、翔ちゃん翔ちゃん」
「ん？何、雅紀」

真剣にこれからの道筋について作戦を立ててる二人を見ながら、雅紀が俺に近寄ってきた。

「俺さ、ずっと考えてたんだけどさ？」
「うん、何を？」

黒目がちの目をクリンとさせて、何の曇りも無い表情。

「鬼って何か、悪いことしたの？」

...え？

悪いこと...？

「だってさ？退治するんでしょ？って事は、何か悪さをした罰なんでしょ？」
「えっ...いや...」

金銀財宝が欲しいから...だなんて、こんな純粋な目をした奴に言えない...！

「ばーか、この馬鹿犬が」
「馬鹿って言うな！」

ニノがシラッと雅紀に言い放った。

「別に悪いことなんてしてなくって良いんだよ。鬼ってゆー存在がニンゲンにとっては、悪の象徴なの」
「えぇ...そんなぁ...」
「よく考えたら、あれ？鬼って別に悪い事してなくね？みたいなのは昔話にありがちなの」

で、勇者は必ず悪を倒すの。

顎を上げたニノに潤が「勧善懲悪だね」と笑う。

「金銀財宝頂くぞー！」
「それって追い剥ぎじゃない？泥棒じゃない？だったら、悪は俺たちじゃない？ねぇっ！ねぇっ！」

拳振り上げたニノに訴える雅紀の言葉に胸が痛む...。