初桜、折しも今日は良き日なり【ars】 (ページ38)

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決めていたコトだ。

太夫と出会った、何年も前から『いつか自分が身請けする』とココロに決めていた。

オレが使えるもんは全部使って金を稼いでたのは、太夫を自分のモンにする為だ。

...なんて言ったらその独占欲に、呆れられるかな。

「太夫、お前の気持ちもちゃんと訊かなきゃな」
「私は...」
「オレで良い？嫌なら、素直に言えよ？無理強いはしたくねぇから」
「...カズさん...私...」

オレの胸にポスンと凭れ掛かり「幸せです...」と太夫は、囁いた。

太夫の頭を撫でて、裸の身体に着物を掛けてやる。

「オレも幸せ」

幸せ、だなんて言葉自分が声に出す日が来るとは思って無かったな。

「愛してるよ、A」

柔らかく、抱き締める。

「...えっ...？」
「Aだろ、お前の名前はA太夫」
「...名前呼んで下さったの...久し振りですね」
「そうだな、...呼べなかったからな」

名前を呼ぶと、愛しい気持ちが止まらなくなる気がしてたんだ。

どんどん、貴女を好きになって...もし...もし、オレより先に誰かが貴女を身請けしたら...

そう思ったらあまりにも辛くて、これ以上惚れたくなかった。

だけどもう

「オレのモンだね、A」
「...はい」
「主人に言わなきゃなぁ。あー...面倒くせ...」
「フフッ、カズさんったら」

笑うAの唇に、笑うオレの唇を重ねる。

「オレ、一気に貧乏になっちゃうけど良い？」
「カズさんさえお傍に居て下されば、それだけで充分です」

鬼ヶ島リゾート、マジで成功させなきゃ死活問題だな...明日早速大野さんとこ行くか。

「カズさん」
「ん？」
「私、もうこのまま花街で散りゆく運命だと思っておりました」

Aが、胸の中でオレを見上げる。

「そんな糞みたいな『サダメ』とやらは、オレが変えてやんよ」

変えらんない運命なんざ、この世にねぇよ。

「A、お前の『サダメ』はオレの隣に一生居る事だ」

そうだろ？

遊女の顔から普通のオンナノコになったAの頬を撫でる。

「一生離さねぇから、心してオレについて来いよ？」
「はい、もちろん」
「ホンット可愛いな、タマンナイ」

オレは、もう一度Aに口付けそのまま優しく押し倒した。

・・・【『散るサダメとは哀れなモノよ』END】・・・