初桜、折しも今日は良き日なり【ars】 (ページ18)

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17.帰ったら、どうするの。ページ18

俺らは船を停めてる島の入り江まで、智くんと一緒にやって来た。

「ホント、皆が来てくれて嬉しかったよ！ありがとう！」

智くんがペコっと頭を下げる。

「大野さん、ビジネスの話ユックリしような。近い内に、また来るわ！」
「うん、ニノ。待ってるね！」

うーん、と背伸びをした雅紀が「ん？良い匂いがする！」って鼻をクンクンさせてキョロキョロしてる。

良い匂い？
雅紀と一緒にキョロキョロしてた俺の目に飛び込んで来た、ポニーテール。

「みなさーん！良かった、間に合った！」

両手に大きな袋を提げてるAちゃん。

「これ、お弁当っ！良かったら、帰り道で食べてね」

手渡されるお弁当入りの袋。

「...あ...でも...良いの？」
「さとちゃんにお代は請求するから大丈夫！」

あっちでニノと喋ってた智くんが、そこだけ耳に入ったらしく大声で「おれだってお金無いって！サービスしろって！」って叫んだ。

「あの...ありがと、Aちゃん...」
「いいえ、また遊びに来てね！翔くん！」
「あっ...は...はい」
「私、お店の準備があるからもう行くけど...気を付けて帰ってね！」

バイバイ！ってまた島の奥に走って行くAちゃん。

ポニーテールが揺れる。

「翔ちゃーん」
「翔さーん、おーい」

犬と雉が、俺の目の前で掌をヒラヒラさせてるけど俺にはそんなの目に入らない。

「...可愛い...」

心臓、壊れそう。

大丈夫かな、俺、死んじゃわないかな。

恋する気持ちで死んじゃった人っているのかな？

「雅紀、俺、苦しいんだけど...」
「フフッ、そうだね。恋は苦しいもんだよ、翔ちゃん」

ポンポンと俺の頭を撫でて、雅紀は船に乗り込んだ。

「ほらー！早く行くよー！皆、乗って！」
「じゃあ、僕はまた空から偵察しながら付いて行くよ」

潤が空へ飛び立つ。

「またな、大野さん」

ニノがピョンと、船尾に飛び乗る。

最後に俺も乗り込んで、鬼ヶ島を後にした。

俺達の姿が見えなくなるまで、手を振り続けてくれる智くん。

何だか、あったかくて、ちょっと泣きそうな気持ちになった。

帰ったら、俺達はまたバラバラだ。

もう、鬼退治はしなくって良いんだから...。

もう、一緒に居る理由が無くなっちゃったんだから...。